不動産

2024/06/21 不動産

【令和3年改正】所在等不明共有者がいる場合における共有物の変更・管理の裁判手続

 本コラムでは、令和3年に新設された所在等不明共有者がいる場合における共有物の変更・管理の裁判手続について説明します。

 

目次

1、問題の所在

2、新設された規定

 ⑴変更について

 ⑵管理について

3、手続きの概要と流れ

 ⑴申立て

 ⑵公告

 ⑶異議届出期間の経過

 ⑷所在等不明共有者以外の共有者間での意思決定

 

1、問題の所在

 共有物の変更・管理に関する行為については、前者については全員の同意が、後者については持分価格の過半数の同意が必要となります。その為、所在等不明者がいる場合に、当該行為についての意思決定ができなくなるといった状況が存在しました。

 そこで、令和3年の民法改正によって、所在等不明共有者がいる場合に、変更・管理について、裁判所の決定を得て行うことができる場合を定める規定が新設されました。

 

2、新設された規定

⑴ 変更について

 変更については、「共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。」(民法2512項)という規定が新設されました。

 この規定により、共有者において、共有者を知ることができないとき、又は共有者の所在を知ることができない場合に、裁判所に申立てを行うことによって、所在等不明共有者以外の他の共有者(全て)の同意により、変更行為を行うことができる旨の裁判所の決定を得ることが可能となりました。

 したがって、裁判所から上記決定を受けることにより、他の共有者全ての同意によって、変更を行うことが可能となります。

 なお、ここでの「変更」には、譲渡や抵当権の設定は含まれないものと理解されています(民法・不動産登記法部会資料51参照)。そのため、所在等不明共有者の共有持分の取得や譲渡権限の付与については、同じく新設された所在等不明共有者の持分取得手続き(民法262条の2)や所在等不明共有者の持分譲渡権限付与の手続き(民法262条の3)を用いることになるものと考えられます。

 

⑵ 管理について

 管理については、民法2522項柱書により、「裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。」とされ、同項1号に「共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。」が規定されています。

 そのため、所在等不明共有者がいる場合においては、裁判所に申立てを行うことにより、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定することができることとなりました。

 

3、手続きの概要と流れ

⑴ 申立て

ア 申立人

 対象となる共有物について持分を有する共有者(民法251条2項、252条2項1号)及び変更の裁判に係る対象物の共有物の管理者(民法252条の2第2項)

 

イ 申立先

 対象となる共有物の所在地を管轄する地方裁判所(非訟法85条1項)

 

ウ 添付書類

・弁護士が代理人となるときはその委任状

・申立人又は共有者が法人(会社など)の場合は全部事項証明書又は資格証明書

・不動産又は不動産に関する所有権以外の財産権の場合には、不動産登記事項証明書(共有・管理非訟規則6条)

・所有者・共有者の探索等に関する報告書(共有物が不動産の場合)

・共有者の所在等が不明であることを裏付ける関係資料の写し(住民票、戸籍謄 本、返却された郵便物、捜索願、他の共有者から聴取した書面等)

・申立てを理由づける事実についての証拠書類の写し(非訟規則37条3項)

 

エ 対象行為の特定

申立てにおいては、加えようとしている変更や、決定しようとする管理事項について特定して行う必要があります。

 

⑵公告

 変更・管理の決定を求める申立てがあった場合、裁判所は以下の事項を公告しなければならないものとされています(非訟事件手続法852項)。

①当該共有物について裁判の申立てがあったこと。

②裁判所が裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

③②の届出がないときは、裁判がされること。

 なお、②の「一定の期間」については、1カ月を下回ってはいけないものとされています。

 

⑶異議届出期間の経過

 裁判は、公告において示された異議届出期間を経過しなければ、することができないものとされています。

 

⑷所在等不明共有者以外の共有者間での意思決定

 他の共有者の同意で変更・管理をすることができる旨の決定が出て、これが確定した後に、所在等不明共有者以外の共有者間での意思決定を行うことにより、変更・管理行為を行うことができます。

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