不動産

2024/09/14 不動産

借地権の前提となる「建物」について  

 

1、借地借家法の適用のある土地の賃貸借契約について

2、「建物」について

3、裁判例の紹介

 

1、借地借家法の適用のある土地の賃貸借契約について

 土地の賃貸借に借地借家法が適用されると、借地権者は存続期間や更新、終了といった多くの点で保護を受けるため、土地の賃貸借契約において、借地借家法の適用の有無は非常に大きな影響を与えます。

 借地借家法第1条は、「建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。」と規定しており、同法21号は、借地権の定義について、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。」と規定しています。

 このように、土地の賃貸借について、借地借家法の適用対象となるには、「建物の所有を目的とする」ものであることが要件となります。

 「建物の所有を目的とする」という要件の中身(判断基準)については、別コラムで紹介しています。本コラムでは、どのような建造物が「建物」に当たるのかについて、説明します。

 

2、「建物」について

 借地借家法第1条の「建物の所有を目的とする」という文言における(借地法の適用の成否の判断に当たっての)「建物」とは、「民法861項にいう土地の定着物のうち、住居、営業、物の貯蔵等の用に供される独立性及び永続性のある建造物を広く含むが、同法256条にいう工作物よりは、その範囲が狭く、土地の定着物たる建造物であっても、通常「建物」とはいうことのできない、橋、広告塔、電柱、記念碑、ガソリンスタンド等は含まないと解すべきであって、その範囲は結局、社会の通念、立法の趣旨等に照らして決めるべきであるとするのが、通説であ」ると考えられています(最高裁判所判例解説民事篇昭和42年度647 )。

 判断に当たっては、「結局は一般通念とその中で営まれる人の生活、営業の保護を目的とする借地法の趣旨から決するほかはない。」と述べた裁判例(東京地判昭和47725日判タ286338頁)も参考になります。

 「建物」の意義は一般通念に従って解釈されるものとされ、課税のための公簿に記入されているかどうかは、借地法上の建物の意義を定めるについては別段関係のない事柄である(最判昭和281224日民集7巻131633頁)とされます。

 

3、裁判例の紹介

⑴否定例

・京都地判昭和601011日金商74541

ア 事案の概要

 露店設備が、借地法1条にいう「建物」に当たるかが問題となった事案です。

 露店設備は、上部にはベニヤ板の天井、トタン板の屋根とテントを施しており、側面はその東と南側は他人の塀、隣家の壁に接着してベニヤ板をはり、北、西側には戸板風の板囲いが取付けられているといった状態で、少なくとも北西角には柱が存せず、通常の建物におけるような土台や床板はなく、床面は原告寺の門前の石畳のままでり、その面積は約二平方メートルであるといったものでした。

イ 裁判所の判断

 裁判所は、「借地法1条にいう「建物」とは、土地に定着して建設された永続性を有する建物で、屋蓋、周壁を有し、住居、営業、貯蔵等の用に供される独立した不動産をいうものと解される。」と述べたうえで、

「本件露店設備は前示のとおり、トタン、テントの屋根は設けられているものの、側面は、南と東は既存の他人の壁、塀にベニヤ板を取付け(これは壁というよりは、単なる内装ともいえる)、北、西面は取外し可能な戸板風の板囲を取付けたものにすぎず、土台も床板も、柱(北西角)も存せず、しかも面積も約二平方メートルに過ぎない少面積、簡易なものであって、寺の門前の狭い場所において、東、南の塀、建物をも利用して、商品陳列台を雨露、盗難から防ぐ設備とはいえても、到底独立性を有する建物ということはできない。」

として、借地法1条にいう建物には当たらないものと判断しました。

 

⑵肯定例

・東京地判昭和47725日判タ286338

ア 事案の概要

 賃貸借契約時において、被告が土地約八〇坪のうち約二〇坪に木造トタン葺平屋建の建築物(以下本件待合所という)を所有してバス乗客の待合所兼切符売場とし、残り約六〇坪をバス発着場兼乗客の乗降場とし、全体として本件土地を被告のバス運行営業用地として利用していた事案で、本件待合所が借地法1条の「建物」に当たるかが問題となった事案です。

イ 裁判所の判断

 裁判所は、まず、「借地法1条の「建物」とは工作物より狭い観念であって、住居のほか営業、物の貯蔵等の目的に使用される永続性と独立性のある建物を広く含むものの、結局は一般通念とその中で営まれる人の生活、営業の保護を目的とする借地法の趣旨から決するほかはない。」と述べました。

 その上で、本件待合所が契約前(契約時より約25年程前)に建てられ、契約時までその大きさ、位置を変えずに本件土地上に存続してきたこと、当初は前面を除く三方の外壁としてトタン板が張られ四寸角位の柱を四隅に配置した木造トタン葺建物であったが、被告はさらに内部を改造し、本件待合所の約四分の一を占める部分に切符売場兼乗務員詰め所を設置し、本件契約時には乗客の待合所、切符売場として利用されていたことといった事実から、借地法1条にいう「建物」に該当するものと認めました。

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