2024/08/24 離婚・男女問題
高額所得者の婚姻費用の算定方法
本コラムでは、高額所得者における婚姻費用の算定方法を説明します。
1、高額所得者の婚姻費用の算定における問題
2、高額所得者の婚姻費用の算定について
⑴算定表の上限を用いる方法
⑵基礎収入割合を修正する方法
⑶公租公課や特別経費等を実額で控除したうえで、貯蓄額を控除する方法
⑷夫婦の同居中及び生活状況から決定する方法
1、高額所得者の婚姻費用の算定における問題
婚姻費用の算定方法は、大まかに、夫婦それぞれの総収入を認定した上で、各所得に応じて決められている基礎収入割合を乗じて、基礎収入を算出し、これを基に権利者世帯に割り振られる婚姻費用の額及び義務者から権利者に支払うべき婚姻費用の額を算定するといった算出方法を取ります。(詳しくは、別コラムをご覧ください。)
また、実務上は、上記の算定方式を基に作成された改定標準算定表を用いて算定されることも多くあります。
しかしながら、算定表においては、総収入の上限額が、給与所得者は2000万円、自営業者は1567万円とされており、所得がこれを超える場合に婚姻費用をどのように算定するかが問題となります。
2、高額所得者の婚姻費用の算定について
高額所得者の婚姻費用を算定する方法は、大きく以下の4つの方法に分けられます。
⑴算定表の上限を用いる方法
改定標準算定表の上限を用いる方法です。
収入が上限金額(給与所得者であれば、2000万円)を若干超える程度であれば、この方法により算定されることが少なくありません。目安としては、500万円程度の超える場合に妥当するものと考えられています。
⑵基礎収入割合を修正する方法
基礎収入割合を修正する方法です。
基礎収入割合とは、総収入から必要な支出(公租公課、職業費(給与所得者のみ)、特別経費)を控除した残額を導くために、総収入に乗じる割合であり、所得額に応じ、給与所得者であれば、54パーセントから38パーセントの範囲で定められています(所得が高いほど、割合は下がります。)。
そこで、高額所得者の場合に、基礎収入割合をさらに下げ、これを乗じて基礎収入を算定する方法が取られることがあります。
裁判例(福岡高決平成26年6月30日判タ1410号100頁)としては、養育費の事案で年収が約6000万円と高額であったケースについて、基礎収入割合を27パーセントとするのが相当としたものがあります。改定前標準算定方式においては、給与所得者の基礎収入割合は最も小さいもので34とされていたため、そこから7パーセント減らした基礎収入割合を用いたことになります。
⑶公租公課や特別経費等を実額で控除したうえで、貯蓄分を控除する方法
元々の算定方式に従い、総収入から、公租公課、特別経費を実額で控除し(特別経費については、統計資料を基に一定の割合を乗じて算定する場合もあります。)、職業費についても統計資料から一定割合を乗じて算定して控除し、さらに場合によっては貯蓄額を控除して基礎収入を算定する方法です。
標準算定方式に従って基礎収入額を算定したうえで、高額所得者については、一定額を貯蓄に回すことから、さらに貯蓄額を控除するという方法です。
貯蓄額についても統計資料を基に算定することになります。
この方法を取った裁判例(東京高決平成28年9月14日判タ1436号113頁)としては、総収入から税金および社会保険料の実額を控除し、職業人特別経費を一定割合を乗じたうえで、算定し控除し、さらに、総収入から税金及び社会保険料を控除した可処分所得の7パーセント分を貯蓄額として控除したものがあります。
⑷夫婦の同居中及び生活状況から決定する方法
標準算定方式を用いずに、夫婦の同居中の生活レベルや生活費支出状況から、相当と考えられる婚姻費用を算定する方法です。
所得が一億円を超えるなど、著しく高額な場合や、従前生活費として一定額を渡していたという事情が認められる場合等に用いられるものと考えられています。