不動産

2024/10/05 不動産

第三者の建物買取請求権(借地借家法14条)

 

 本コラムでは、第三者の建物買取請求権(借地借家法14条)について、説明します。

 

1、第三者の建物買取請求権が問題となる場面

2、第三者の建物買取請求権の要件

3、建物買取請求権行使の効果

 

1、第三者の建物買取請求権が問題となる場面

 借地権者が、借地上の建物を第三者に譲渡した場合、建物譲受人は基本的借地権も併せて取得することになります。

 判例(最判昭和47年3月9日民集26巻2号213頁)においても、「賃借地上にある建物の売買契約が締結された場合においては、特別の事情のないかぎり、その売主は買主に対し建物の所有権とともにその敷地の賃借権をも譲渡したものと解すべき」とされています。

 もっとも、借地権が賃借権である場合、賃借権の譲渡については賃貸人の承諾がない限り、対抗することができません(民法612条1項)。

 賃借権の無断譲渡は賃貸借契約の解除事由となるため、借地権設定者により解除され、土地明け渡しを求められると、譲受人は占有権原を失い、借地権設定者に対し、土地を明け渡す必要があります。

 しかしながら、このような場合に、賃借人が建物についても収去しなければならないとすると、賃借人の投下資本の回収ができなくなり、また、社会的に不経済であることから、このような場合に賃借人(譲受人)から借地権設定者に対する建物買取請求を認めたのが、借地借家法14条の規定です。

 

2、第三者の建物買取請求権の要件

 借地借家法14条は、「第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」と規定しています。

 第三者による建物買取請求が認められるには、①土地賃貸借契約の存在、②第三者による建物所有権の取得、③借地権設定者による譲渡等の不承諾が要件となります。

 

⑴ 土地賃貸借契約の存在

 第三者による建物買取請求権が認められるには、土地が賃貸借契約の目的物であり、その土地上に買取請求の対象となる建物が存在する必要があります。

 土地の賃貸借契約が譲渡の時点で消滅していたような場合には、適用されません。

 また、建物所有権取得後に、賃料不払い等によって賃貸借契約が解除され消滅したような場合にも、判例(最判昭和33年4月8日民集12巻5号689頁)は、買取請求権が消滅するものとしています。

 一方で、建物譲渡後に賃貸人と譲渡前の賃借人が賃貸借契約を合意解除したような場合であっても、建物買取請求権は消滅しないものと考えられています。

 

 なお、一時使用目的の賃借権については、判例(最判昭和29年7月20日民集8巻7号1415頁)は、「(一時使用目的の賃借権は)全く借主個人の一時的目的に着眼しての貸借であつて、もともと他人への譲渡(融通性)などということは念頭にない」といったことを理由として、一時使用目的の賃借権である場合には、適用を否定していますが、学説においては、見解が分かれています。

 

⑵ 第三者による建物所有権の取得

 第三者が建物所有権を取得したことが要件となります。売買のほか、競売による取得の場合も適用されます。

 相続によって取得した場合には、賃借権の取得を借地権設定者に対して対抗できる(承諾が不要となる)ため、建物買取請求権の行使は問題とならず、適用されないと考えられています。

 なお、建物買取請求権行使に当たっては、建物の所有権移転登記を具備する必要があると考えられています。

 

⑶ 借地権設定者による譲渡等の不承諾

 前述のとおり、第三者による建物買取請求権は、借地権者が譲渡の承諾しない場合の規定であるため、借地権設定者による承諾がないことが要件となります。

 

3、建物買取請求権行使の効果

 借地権者(建物取得者)が、借地権設定者に対し、建物買取請求権を行使する(その旨の意思表示を行う)と、借地権者と借地権設定者との間に建物の売買契約が成立することになります。

 この場合の売買価額は建物の時価となります。借地権価額は直接には加算されませんが、場所的環境は考慮されます。

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