2024/10/03 不動産
借地契約の更新後の建物再築の許可
本コラムでは、借地借家法の適用される借地契約における、更新後の建物再築の許可(借地借家法18条)について説明します。
1、借地契約の更新後の建物の再築
2、借地権設定者の承諾に代わる裁判所の許可
1、借地契約の更新後の建物の再築
借地借家法の適用される借地契約の更新後に建物が滅失した場合の建物再築について、借地借家法8条2項は、「借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。」と規定しています。
したがって、借地契約の更新後に借地権者が借地権設定者の承諾を得ずに、残存期間を超えて存続する建物を建てた場合には、借地権設定者はこれを解約することができます。
そのため、借地権者は、借地借家法の適用される借地契約の更新後に建物が滅失した場合の建物再築について、借地権設定者の承諾を取る必要が生じます。
そして、借地権設定者の承諾を得られない場合については、借地権者は、一定の場合に借地権設定者の承諾に代わる裁判所の許可(借地借家法18条1項前段)を得ることができます。
以下、借地権設定者の承諾に代わる裁判所の許可について説明します。
2、借地権設定者の承諾に代わる裁判所の許可
⑴ 借地権設定者の承諾に代わる裁判所の許可
借地借家法18条1項は、以下のとおり規定しています。
「契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第7条第1項の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。」
借地権設定者の承諾に代わる裁判所の許可がされるには、①(残存期間を超える建物の)再築につきやむを得ない事情があること、②借地権設定者が再築を承諾しないこと、③借地権設定者からの解約の申入れを排除する特約がないことといった要件を満たす必要があります。
また、裁判所は、付随処分として、当事者間の衡平を図るため必要がある場合に、(1)延長すべき借地権の期間を定めること、(2)借地条件を変更すること、(3)財産上の給付を命じること、(4)その他相当の処分をすることができます。
⑵ 「やむを得ない事情」
「やむを得ない事情」は、借地権者が建物を再築せざるをえない理由が、借地権設定者が再築の承諾をしない事情を超える場合でなければならないとされます(稲本洋之助・澤野順彦編『コンメンタール借地借家法(第4版)』(日本評論社 2019)138頁)。
また、やむを得ない事情の考慮要素について、借地借家法18条2項は、「裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。」と規定しており、①建物の状況、②建物の滅失に至った事情、③借地に関する従前の経過、④借地権設定者の土地使用の必要性、⑤借地権者(転借地権者含む。)の土地使用の必要性、⑥その他一切の事情が考慮されます。