相続・遺言

2024/09/28 相続・遺言

遺留分の放棄について

 

本コラムでは、遺留分の放棄について説明します。

 

1、相続発生前の遺留分の放棄

2、相続発生後の遺留分の放棄

 

1、相続発生前の遺留分の放棄

⑴ 遺留分放棄の方法

 民法1049条1項は、「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。」と規定しています。

 したがって、相続開始前に遺留分を放棄する場合には、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。家庭裁判所は、遺留分放棄の許可をするに当たって、①申立人の真意に基づくものであることのほか、②遺留分放棄の合理性及び必要性、③遺留分放棄の代償としての金銭等の支払の有無といった点を考慮して判断するものとされています。

 これは、被相続人や他の相続人による強要によって、一部の推定相続人が遺留分の放棄を強いられてしまうようなことがないようにするためです。

 その為、遺留分を放棄する旨の念書等を書いていたばあいであっても、遺留分が放棄されたものとは認められません。

 もっとも、被相続人の生前、被相続人との間で、「将来、被相続人が死亡した際に、被相続人から受ける相続分に相当する財産を既に取得することを認め、将来相続分及び遺留分を請求しないことを約束する。」という裁判上の和解が成立していたものの、その後家庭裁判所の許可を得ていなかったという事案で、

遺留分放棄については家庭裁判所の許可がない為に効力がないとしつつも、個別事情を踏まえた上で、「家庭裁判所の許可の手続が履践されていないことを奇貨として、遺留分減殺請求権を行使することを認めるならば、先の和解の合意に反し、原告らに二重取りを許すことになり、著しく信義に反することになる。」として、信義則上、遺留分の請求を認めなかった裁判例(東京地判平成11年8月27日判タ1030号242頁)もあります。

 なお、遺留分の放棄については、遺留分全部の放棄のみでなく、一部の放棄も可能であると考えられています(松川正毅・窪田充見編『新基本法コンメンタール相続(第2版)』327頁〔潮見佳男〕(日本評論社、2023)。

 

⑵ 遺留分放棄と他の相続人の遺留分

 民法1049条2項は、「共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。」と規定しています。

 したがって、遺留分の放棄が行われた場合であっても、他の共同相続人の遺留分が増加することも、減少することもありません。

 

2、相続発生後の遺留分の放棄

 相続発生後は、遺留分侵害額請求権の放棄を行うことができます。これには家庭裁判所の許可も不要です。

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