不動産

2024/09/19 不動産

借地権の更新拒絶における「遅滞なく異議を述べたとき」について

 

 本コラムでは、借地権の更新拒絶における遅滞なき異議について、説明します。

 

1、借地権の更新と「異議」について

2、「遅滞なく」の意味について

3、裁判例の紹介

 

1、借地権の更新と「異議」について

 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者は借地権設定者との合意によって借地契約を更新するほか、一定の要件を満たす場合に、借地権設定者の合意がなくても更新することが可能です。

 具体的には、借地権者が借地権設定者に対し、更新の請求をすることによる更新(借地借家法51項)と、借地権者が存続期間満了後も土地の使用を継続することによる更新(借地借家法52項)があります。

 それぞれの場合において、借地権設定者は、(正当事由(借地借家法6条)があることが前提ですが)遅滞なく異議を述べた場合には更新を拒絶することができます(借地借家法51項但し書き)。

 もっとも、この「遅滞なく」という時期を巡って問題となることがあります。

 

2、「遅滞なく」の意味について

 期間満了後の意義が遅滞なく述べられたか否かは具体的事案に即して判断すること(稲本洋之助・澤野順彦編『コンメンタール借地借家法(第4版)』(日本評論社 201931頁)となりますが、更新請求の場合(借地借家法51項)において、更新請求後の考慮に必要な時間が経過した後に、借地権設定者が述べた異議は、遅滞したものと解され、土地使用継続による更新(借地借家法5条2項)の場合と比べると、更新請求の場合は短い期間が要求されるものと考えられています(田山輝明・澤野順彦・野澤正充編『新基本法コンメンタール【第2版】借地借家法』34頁〔小柳〕(日本評論社、2019))。

 (旧借地法上の判断ですが)判例(最判昭和391016日民集18巻8号1705頁)においては、「賃貸借契約の締結が遠い過去に属し、賃貸人賃借人の双方共にとつて契約締結の時期があいまいになり、賃貸人に対し期間満了の際直ちにそのことを知つて異議を述べることが容易に期待できず、賃借人もまたその時期にはこれを予期していないような特段の事情がある場合においては、賃貸人が漸く期間満了の時期が到来したと推測して直ちに述べた異議が、訴訟における審理の結果判明した契約成立の時期から起算すると、賃貸借の期間満了後若干の日時を経過した後に述べられたことになるとしても、この異議をもつて借地法六条にいう遅滞なく述べられた異議に当ると解すべき余地がある」として、個別事情(土地賃貸借契約の成立は数十年以前のことであるが、契約成立を証する書面もなく、契約当初の関係者がほとんど死亡しているなどの事情)を考慮したうえで、期間満了から約1年半が経過した後の異議を「遅滞なくなされた異議に当る」と判断したものがあります。

 

3、裁判例の紹介

⑴「異議が遅滞なく述べられた」と認められなかった裁判例

・東京高判平成6328日判例時報150565

 土地賃貸借契約の期間が、昭和56年8月19日までであったところ、借地権設定者が、昭和581020日頃に借地人に対し、土地の使用継続について異議を述べたと主張した事案で、裁判所は、更新時期から2年以上を経てされたものであること、賃貸借契約の終了時期を知りがたいなどの特段の事情があったとも認めがたいとして、右異議が遅滞なく述べられたものといえないことは明らかであると判断しました。

 

⑵「異議が遅滞なく述べられた」と認められた裁判例

・東京地裁平成7224日判タ902101

 賃貸借期間満了の約2か月後に行われた借地権設定者の更新拒絶の意思表示について、事者にとって本件借地の賃貸借の期間が何時満了するかは必ずしも明らかでない事情にあったことや、借地権設定者の兄から借地権者の長男に対し、期間満了前に、賃貸借契約を更新する意向がないことが伝えられていたといった事実に照らして、遅滞なくされたものと判断しました。

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