不動産

2024/09/18 不動産

事業用定期借地権等について

 

 本コラムでは、事業用定期借地権等について、簡単に説明します。

 

1、事業用定期借地権等について

2、事業用定期借地権(借地借家法231項)

3、事業用借地権(借地借家法232項)

 

1、事業用定期借地権等について

 借地借家法は、「専ら事業のように供する建物の所有を目的とする」借地契約について、特別の規定を設けています。

 借地借家法は、借地人を強力に保護するものですが、事業用定期借地権等については、普通借地契約において定められている契約の更新や建物買取請求をしない旨の特約が認められたり、更新や建物買取に関する一部の規定が適用されないといった特徴があります。

 

2、事業用定期借地権(借地借家法231項)

 借地借家法231項は、「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。」と規定しています。

 

⑴前提条件

 ①専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、②存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定することが、事業用定期借地権の成立を可能とする前提条件となります。

 また、借地借家法233項は、「前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。」と規定していることから、③同契約を公正証書によって行うことも要件となります。

 専ら事業の用に供する建物の所有が要件とされていることから、居住用の建物を所有する目的である場合は、事業用定期借地権を設定することはできません。事業用と居住用が併設されているような場合に、要件を満たすのかが問題となりますが、「専ら」と規定されていることから、このような場合は、要件を満たさないものと考えられます。

 なお、「事業」は、営利・収益を目的とする活動つまり営業のほか、公共的・公益的な目的をもつ活動を含むとされており(稲本洋之助・澤野順彦編『コンメンタール借地借家法(第4版)』(日本評論社 2019177頁)、事業の主体は、法人でも自然人でもよいものとされています。

 

⑵効果

 上記の要件を満たすと、第9条及び第16条の強行規定にかかわらず、()契約の更新がないこと、(ⅱ)建物が再築された場合であっても期間延長がないこと及び(ⅲ)存続期間が満了した場合に建物買取請求をしない旨の特約を定めることができます。これらの特約を定めることにより、事業用定期借地権を設定することができます。

 なお、()から()の特約は、一体として定めることを要し、借地権の設定に際してはその一つでも欠けると事業用定期借地権とは認められないものの、以上の特約をした上で、期間満了の時に借地権設定者が建物を買い取る旨の再特約は有効と解してよい(田山輝明・澤野順彦・野澤正充編『新基本法コンメンタール【第2版】借地借家法』145頁〔澤野〕(日本評論社、2019))と考えられています。

 

3、事業用借地権(借地借家法232項)

 借地借家法232項は、「専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。」と規定しています。

 

⑴要件

 ①専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、②存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定することが事業用借地権の要件となります。

 また、借地借家法233項は、「前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。」と規定していることから、③同契約を公正証書によって行うことも要件となります。

 専ら事業の用に供する建物の所有が要件とされていることから、居住用の建物を所有する目的である場合は、事業用定期借地権を設定することができないこと等は上記と同様です。

 

⑵効果

 上記要件を満たして、事業用借地権を設定した場合には、特約を要することなく、借地借家法第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定が適用されないことになります。具体的には、借地権の存続期間に関する規定、更新に関する規定、建物再築による期間延長に関する規定、存続期間満了時の建物買取請求に関する規定、借地契約更新後の建物再築許可に関する規定が適用されないという効果を有します。

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