2024/09/17 不動産
借地契約の更新について
本コラムでは、借地借家法における借地契約の更新について説明します。
1、借地契約の更新について
2、借地人からの請求による更新
3、継続使用による更新
4、更新拒絶
1、借地契約の更新について
借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者は借地権設定者との合意によって借地契約を更新するほか、一定の要件を満たす場合に、借地権設定者の合意がなくても更新することが可能です。
このような合意によらない更新方法には、借地権者からの請求による更新と土地の継続使用による更新があります
2、借地人からの請求による更新
借地借家法第5条1項は、「借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。」と規定しています。
①借地権の存続期間が満了する場合であること、②借地権者による更新請求、③建物が存在することが要件となります。
⑴借地権の存続期間満了
更新請求権の発生時は借地契約が満了する場合となります。債務不履行によって借地権が消滅した場合や、合意解約による終了といった場合には認められません。
この点、旧借地法第4条1項は「借地権消滅ノ場合ニ於テ」と規定していたことから、文言上は上記のような場合にも更新請求の規定が適用されるという疑義が生じ得るところでしたが、借地借家法の規定では、「借地権の存続期間が満了する場合において」として明確にされています。
⑵借地権者による更新請求
更新請求をすることができるのは、借地権者です。
転借地権者が更新請求をなし得るか問題となることがありますが、直接の契約関係が存在しない転借地権者が借地権設定者に対して更新請求を行うことは難しいと考えられています。
もっとも、債権者代位によって、借地権者の有する更新請求権を転借地権者が代位行使する方法も示されています(稲本洋之助・澤野順彦編『コンメンタール借地借家法(第4版)』(日本評論社 2019)26頁)。
⑶建物の存在
借地権者が、更新請求を行い、更新をするためには建物が存在している必要があります。
もっとも、判例(最判昭和52年3月15日判時852号60頁)においては、借地権設定者の建築禁止通告及びこれに続く本件仮換地明渡調停の申立によって建物の築造を妨げられ、その結果、賃貸借期間満了の際本件仮換地上に建物を所有することができない状態となるに至った事案において、「このような場合、上告人(賃貸人)が地上の建物の不存在を理由として被上告人(借地人)に借地法四条一項に基づく借地権の更新を請求する権利がないと主張して争うことは、信義則上許されない」とされており、借地権設定者の妨害によって建物が再建築できなかったような場合には、更新請求を否定することはできないものとされています。
3、継続使用による更新
借地借家法第5条2項は、「借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。」と規定しています。
①借地権の存続期間満了、②借地権者の土地使用継続、③建物の存在が要件となります。
⑴借地権の存続期間満了
借地権の存続期間が満了した場合に本条1項の更新請求の規定が適用されます。債務不履行解除による借地権消滅や、合意解除の場合が含まれないことは、更新請求の場合と同様です。
⑵借地権者の土地使用継続
借地権者が、存続期間が満了した後も土地使用を継続する必要があります。
借地権者自身が土地使用を継続する必要がありますが、借地権者が所有する借地上の建物を第3者に使用させているような場合であっても、同要件は満たすものと考えられています。
なお、借地借家法第5条3項は、「転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする土地の使用の継続を借地権者がする土地の使用の継続とみなして、借地権者と借地権設定者との間について前項の規定を適用する。」と規定しており、転借地権者による土地使用継続は、借地権者による土地使用継続とみなされます。
⑶建物の存在
建物が存続期間満了時に借地上に存在している必要があります。
旧借地法6条1項は、建物の存在を土地使用継続による更新請求の要件としていませんでしたが、借地借家法5条2項は、建物の存在を要件としています。
4、更新拒絶
上記の更新については、借地権設定者は、遅滞なく異議を述べた場合には更新を拒絶することができます。異議を述べるには、前提として正当事由(借地借家法6条)が必要であり、この要件を巡って問題となることが多くありますが、この点については別のコラムで説明します。
異議とは、借地契約を更新する意思がないことを明らかにする意思表示であり、更新拒絶する借地権設定者は、これを遅滞なく述べることが必要です。
更新請求による更新では、請求後考慮に必要な期間以内に異議を出すことが求められ、土地使用継続による更新に比してその期間は短いものと考えられています。