相続・遺言

2024/09/04 相続・遺言

遺産分割の対象となる財産について

 

 本コラムでは、遺産分割の対象となる財産とならない財産について、簡単に説明します。

 

1、遺産分割の対象となる財産

2、具体例

3、遺産分割の対象とならない財産

 

1 遺産分割の対象となる財産

 遺産分割の対象となる財産は、原則として、以下の条件を満たす相続財産です。

 ・相続開始時に存在したこと

 ・相続開始時に被相続人に帰属していたこと

 ・積極財産であること

 ・遺産分割時に存在すること

 ・未分割であること

 

2 具体例

 具体的には、上記の条件を満たす相続財産である土地、建物、借地権、現金、動産、有価証券、預貯金債権等が遺産分割の対象となる財産となります。

 

3 遺産分割の対象とならない財産

⑴一身専属権

 帰属上の一身専属的な権利(民法第896条ただし書き)は、そもそも相続財産に含まれず、遺産分割の対象財産となりません。

 一身専属的な権利としては、婚姻費用分担請求権(義務)や、扶養請求権(義務)等が挙げられます。

 

⑵祭祀財産

 民法897条は、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。」と定めており、祭祀財産については、被相続人の指定がない限り祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するため、そもそも相続財産に含まれるものではなく、遺産分割の対象財産となりません。

 

⑶相続発生後の果実

 遺産に収益物件があった場合に相続発生後に当該物件から生じた賃料債権等、遺産から生じた収益については、遺産とは異なりますので、遺産分割協議の対象財産となりません。

 判例(最判平成17年9月8日判時1913号62頁)においても、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である」とされています。

 もっとも、共同相続人全員の合意により、遺産分割の対象に含めるという合意をすれば、これも含めて分割することが可能であり、そのような実務上多く見られます。

 

⑷可分債権

 預貯金債権を除く可分債権については、法定相続分に応じて当然分割となるため、遺産分割の対象財産となりません。

被相続人が事故等で死亡した場合の損害賠償請求債権等の金銭債権について、法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するもの(最判昭和29年4月8日民集8巻4号819頁)とした判例があります。このように、可分債権については遺産分割協議の対象財産とはなりません。

 

⑸生命保険金

 被相続人が生命保険契約において、特定の者を保険金受取人としていた場合、当該保険契約によって支払われる生命保険金は、その者の固有の財産となるため、遺産分割の対象財産には含まれません。

 なお、被相続人が保険金受取人を指定していなかった場合等には、約款の規定によることとなりますが、被保険者の相続人に支払うという規定であった場合には、相続人各人が相続分に応じて取得することとなります。

 

⑹死亡退職金

 死亡退職金については、厳密には死亡退職金の規定によるということにはなりますが、多くの場合、対象財産には含まれません。

 

⑺相続開始後に処分された財産

 相続開始後に処分された財産についても、原則としては遺産分割の対象財産とはなりません。もっとも、例外的に共同相続人全員の同意によって、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができます(民法906条の2第1項)。また、共同相続人の一人又は数人によって財産が処分されたときは、当該相続人については、同意がなくとも、他の共同相続人全員の同意があれば遺産とみなすことができます(民法906条の2第2項)。

 

⑻債務

 相続債務は遺産分割の対象財産になりません。

 

⑼葬儀費用

 葬儀費用は遺産分割の対象財産とはなりません。

 基本的には、当事者間での特段の合意がない限り、葬儀主宰者が負担することが一般的です。

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