相続・遺言

2024/08/17 相続・遺言

遺言能力とは

 

 本コラムでは、遺言能力について簡単に説明します。

 

1、遺言能力とは

2、判断基準

3、遺言能力の判断において考慮される要素

 

1、遺言能力とは

 遺言能力とは、遺言を単独で有効に行いうる能力であると理解されていますが、具体的には、遺言者が遺言事項(遺言の内容)を具体的に決定し、その法律効果を弁識するに必要な判断能力であると説明できます。

 一般には、行為能力よりは低い程度の能力で足りるものと理解されています。

 当然ながら意思能力は求められるため、遺言者が遺言時に意思能力を欠いていた場合には、遺言は無効となります(民法3条の2)。

 

2、判断基準

上述のとおり、遺言能力が、遺言者が遺言事項(遺言の内容)を具体的に決定し、その法律効果を弁識するに必要な判断能力であると捉える以上、遺言事項の内容(複雑性)によって、相対的に判断されるものと考えられ、画一的な基準により決められるものではありません。内容が複雑であれば、その内容を理解し、法律効果を弁識するためのより高度な判断能力が求められることになります。

 この点については、

「痴呆性高齢者の遺言能力の有無を検討するに当たっては,遺言者の痴呆の内容程度がいかなるものであったかという点のほか,遺言者が当該遺言をするに至った経緯,当該遺言作成時の状況を十分に考慮し,当該遺言の内容が複雑なものであるか,それとも単純なものであるかとの相関関係において,慎重に判断されるべき」とした裁判例(東京地判平成29316日)が参考になります。

 

3、遺言能力の判断において考慮される要素

 裁判実務では、遺言能力の判断に当たって主に以下のような要素が考慮されているものと分析されています(岩木宰「遺言能力」判例タイムズ1100466頁(2002))。

①遺言者の年齢

②病状を含めた心身の状況及び健康状態とその推移

③発病時と遺言時との時期的関係

④遺言時及びその前後の言動

⑤日頃の遺言についての意向

⑥受遺者との関係

⑦遺言の内容

 「遺言能力の有無は,遺言の内容,遺言者の年齢,病状を含む心身の状況及び健康状態とその推移,発病時と遺言時との時間的関係,遺言時と死亡時との時間的間隔,遺言時とその前後の言動及び精神状態,日頃の遺言についての意向,遺言者と受遺者との関係,前の遺言の有無,前の遺言を変更する動機・事情の有無等遺言者の状況を総合的に見て,遺言の時点で遺言事項(遺言の内容)を判断する能力があったか否かによって判定すべき」と述べた裁判例(東京地判平成1677日判タ1185291頁)も参考になります。

 

 

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