2024/08/11 相続・遺言
遺言の検認
本コラムでは、遺言の検認について簡単に説明します。
1、遺言の検認とは
2、遺言の検認の意義
3、遺言の検認手続き
4、遺言書の開封
1、遺言の検認とは
民法1004条3項は、「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。」と規定しています。
そのため、遺言書の保管者、又は遺言書の保管者がない場合に遺言書を発見した相続人は、相続の開始後遅滞なく、家庭裁判所に検認の手続きを請求する必要があります。
遺言の検認手続きは、公正証書による遺言及び自筆証書遺言保管制度により保管されている遺言以外の遺言において、行うことが求められます。
2、遺言の検認の意義
遺言の検認手続きが求められる理由は、遺言書は偽造や変造の可能性があり、またこれらを巡って争われる可能性があることから、遺言書の現状を確認し、この状態を保全することにあります。
検認は、このようにあくまでも遺言書の客観的状態に関する現状を確認し、証拠を保全する手続きであるため、遺言の内容や効力を確定するという効力はありません。遺言能力の判断は当然のこと、形式的要件や様式の充足の有無といった点を調査、確認するものでもありません。
裁判例(東京高判昭和32年11月15日下民集8巻11号2102頁)においても、「遺言書の検認は、遺言の執行前において専らその形式その他の状態を調査確認し、以て他日における遺言書の偽造変造を防止し、且つその保存を確実ならしめる目的に出でた一種の検証手続に過ぎず、遺言の内容の真否、その効力の有無等実体上の効果を判定するものでないから、裁判所の検認を経たとの一事を以て、当該遺言書が真正に成立したとの推定を受くべき筋合でない」として、遺言書の検認を得たことが、遺言の真正な成立を推定するものではないと述べられています。
3、遺言の検認手続き
遺言書の保管者、又は遺言書の保管者がない場合には相続人が家庭裁判所に対して検認の申立てを行います。
申立てを受けた裁判所は、けん引期日を定め、相続人に呼出状を送付します。申立人以外の相続人が検認期日に出席せずに、全員が揃わなくても検認手続は行われます。
家庭裁判所が、期日において、遺言書の現状を確認し、保全するために必要な一切の事実を調査し、検認調書を作成します。遺言書には、検認済みの証明が付されます。
4、遺言書の開封
民法1004条1項は、「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。」と規定しています。
そのため、封印のある遺言書については、家庭裁判所において、相続人又はその代理人の立会いがなければ開封することはできません。
もっとも、呼び出しを行ったのにもかかわらず、正当な理由なく立会いに応じないような場合には、立会いなしで開封できると考えられています。