相続・遺言

2024/08/01 相続・遺言

秘密証書遺言の概要

 

 本コラムでは、秘密証書遺言について、その概要を説明します。

 

1、秘密証書遺言とは

2、秘密証書遺言の方式

⑴遺言者による証書への署名押印

⑵遺言者による証書の封印

⑶遺言者による申述

⑷公証人による封紙への記載及び公証人、遺言者及び証人による署名押印

3、秘密証書遺言の方式を充たさない場合

 

 

1、秘密証書遺言とは

 秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にして遺言書を作成するという点に特徴があります。遺言書の存在自体は明らかになり、また、公証人と証人が関与することから、偽造や変造のおそれは小さくなります。

 公正証書遺言では、内容を公証人が知ることになりますが、秘密証書遺言では、公証人も内容を知ることはありません。もっとも、公証人が内容について確認しないことから、方式違背により無効となるおそれは大きくなります。

 自筆証書遺言と異なり、署名を除き、自書である必要がある点も大きな特徴です。

 なお、公正証書遺言とは異なり、家庭裁判所での検認が必要となります。

 

2、秘密証書遺言の方式

⑴遺言者による証書への署名押印

 「遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。」(民法97011号)とされており、遺言者がその証書に署名し、それに押印することが必要です。署名押印の対象となる証書自体は、パソコンやワープロで作成することも可能であり、他人が書いたものでもよいと考えられています。この点で、自筆証書遺言と異なります。日付の記載も必要とされず、この点も自筆証書遺言と異なります。

 なお、署名押印については、遺言者自身がする必要があります(押印については、他人をしてなさしめてもよいとする見解もあります。)。

⑵遺言者による証書の封印

 「遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。」(民法97012号)とされており、遺言者が上記の証書を封じ、証書に用いた印章によって、封印することが必要となります。

⑶遺言者による申述

 「遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。」(民法9701項3号)とされており、遺言者が、上記の封書を、公証人一人及び証人二人以上の前に提出することと、それが自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述することが必要です。

 他人にパソコンで証書の文章を入力してもらったような場合に、ここにいう「筆者」が、遺言者なのか、入力した者なのか問題となることがあります。

 この点について、他人がワープロによって文章を印字した事案で、判例(最判平成14924日家月55巻3号72頁)は、本件遺言の内容を筆記した筆者は,ワープロを操作して本件遺言書の表題及び本文を入力し印字した者であるというべきであると判断しました。

⑷公証人による封紙への記載及び公証人、遺言者及び証人による署名押印

 「公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。」(民法9701項4号)とされており、公証人が、遺言者が証書を提出した日付と遺言者の申述を封紙に記載した後、公証人が遺言者及び証人とともに、署名押印をする必要があります。

 

3、秘密証書遺言の方式を充たさない場合

 民法971条は、「秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第九百六十八条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。」と定めています。

したがって、秘密証書遺言に方式違背があった場合でも、自筆証書遺言として効力が認められる場合があります。具体的には、封印に問題があった場合等が挙げられます。

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