相続・遺言

2024/07/31 相続・遺言

公正証書遺言の概要  

 

 本コラムでは、公正証書方式と作成方法について、簡単に説明します。

 

目次

1、公正証書遺言について

2、公正証書遺言の方式

⑴証人二人以上の立会い

⑵遺言者による口授

⑶公証人による遺言者の口授の筆記及び遺言者及び証人に対する読み聞かせ又は閲覧

⑷遺言書及び承認による承認と署名押印

⑸公証人による付記と署名押印

3、口が聞けない者についての特則

4、耳が聞こえない者についての特則

 

1、公正証書遺言について

 公正証書遺言は、①証人二人以上の立会いの下で(民法9691号)、②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し(同2号)、③これを公証人が筆記し、遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させ(同3号)、④遺言者及び証人が、筆記が正確なことを承認した後これに署名押印し(同4号)、公証人が、証書が①から④の方式に従って作ったものである旨を付記し、署名押印するという方式によって作成される遺言です。

 公正証書遺言は、以下のようなメリットがあります。

・法律の専門家である公証人が関与することから、方式を充たさないことや遺言の解釈を理由とする紛争できること

・公証役場に保管される(原則20年)ことによって偽造や変造の危険が小さいこと

・家庭裁判所での遺言検認手続きが不要であること

 他方で、作成に当たっては手続きを要することや、費用がかかるといったデメリットがあります。

 

2、公正証書遺言の方式

 公正証書遺言は、以下の方式に従って作成される必要があります。

⑴証人二人以上の立会い

 公証人のほかに、証人二人以上の立会いが求められ、証人は、遺言手続きの最初から最後まで立ち会う必要があります。遺言者が自己の意思によって口授したことや、筆記の正確性を確認する役目を持っています。

 なお、裁判例(広島地裁呉支判平成元年8月31日家月42巻5号97頁)においては、公正証書遺言の両立会証人が、①口授が始まってから公証人役場に着き、②公証人に口授しているのを,約7メートル離れたところで、十分聞取れないまま傍観者的に耳にしていただけであった事案において、

民法969条1号が証人の立会を遺言公正証書作成の1要件としたのは,証人に遺言者の口授を耳で聴かせ,その後公証人による公正証書の読上げを聴かせ,この両者の比較によって証書の記載が口授のとおりであるかを確認させることによって,遺言書作成の適正を担保するためである」としたうえで、

証人は、「口授と証書の内容が一致するか否かを確認するに由なく,同法条の定める証人立会の要件を実質的に欠くといわざるをえない。」として、方式違背を理由として無効としたものがあります。

 

⑵遺言者による口授

 遺言者が、遺言の内容(趣旨)を、公証人に口頭で伝えることが必要です。

 実務上は、公証人が予め証書を作成しておき、その後に遺言者から口授を受け、書面の内容と一致することを確認し、これを読み聞かせる方法や、証書を読み聞かせ、遺言者がこれを承引する形で、口授とするという方法が取られることもあります。

 このような方法が方式に違背するかが問題となり得るところですが、判例(最判昭和431220日民集22巻13号3017頁)においては、公証人が、あらかじめ遺言者でない者から聴取した遺言の内容を筆記したうえ、遺言者に面接し、遺言者および立会証人に既に公正証書用紙に清書してある右遺言の内容を読み聞かせたところ、遺言者は、右遺言の内容と同趣旨を口授し、これを承認して右書面にみずから署名押印したという順序で公正証書遺言の作成が行われた事案で、

民法九六九条二号の口授と同条三号の筆記および読み聞かせることとが前後したに止まるのであつて、遺言者の真意を確保し、その正確を期するため遺言の方式を定めた法意に反するものではない」として、遺言の方式に違背はないものとされています。

もっとも、判例(最判昭和51年1月16日家月28巻7号25頁)によれば、「公証人の質問に対し言語をもつて陳述することなく単に肯定又は否定の挙動を示したにすぎないときには、民法九六九条二号にいう口授があつたものとはいえ」ないものとされており、このような場合には、口授があったものとは認められません。

 

⑶公証人による遺言者の口授の筆記及び遺言者及び証人に対する読み聞かせ又は閲覧

 遺言者の口授した内容を公証人が筆記することが必要です。遺言者の口授は遺言の趣旨を口授するものであるため、筆記は遺言者の口授そのまま記載する必要はありません。

 筆記は公証人の自筆である必要はなく、公証人の監督の下で記載されたものであっても構いません。

 公証人は、筆記した内容を遺言者及び証人に対して読み聞かせ又は閲覧させる必要があります。

 

⑷遺言書及び証人による承認と署名押印

 遺言者及び証人は、筆記が正確なことを承認した後、これに署名押印をする必要があります。遺言者が署名することができない場合は、公証人がその理由を付記して、署名に代えることができます。

 署名することができない場合とは、遺言者が、病気等によって署名できない状況にある場合のほか、読み書きができないといった場合も含まれます。

 

⑸公証人による付記と署名押印

 公証人が、上記⑴から⑷(民法9691号から4号)に掲げる方式に従って作成したものである旨を付記し、これに署名押印することが必要です。

 

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