離婚・男女問題

2024/07/14 離婚・男女問題

宝くじの当選金やギャンブルの獲得金と財産分与について

 

  本コラムでは、宝くじの当選金やギャンブルでの獲得金が財産分与においてどのように考慮されるかについて、説明します。

 

1、はじめに

2、宝くじに関する裁判例

 ⑴事案の概要

 ⑵原審の判断

 ⑶抗告審の判断

 ⑷原審と抗告審の違い

3、競馬に関する裁判例

 ⑴事案の概要

 ⑵裁判所の判断

4、おわりに

 

1、はじめに

 財産分与(清算的財産分与)においては、婚姻中に夫婦が協力して得た財産が清算の対象財産となります。また、清算的財産分与における分与割合は、分与対象財産の取得及び維持に対する寄与割合に応じるものと考えられますが、実務上は、基本的には2分の1ずつとする2分の1ルールが取られています。

 宝くじの当選金やギャンブルでの獲得金の場合、①財産分与の対象財産となるか(夫婦が協力して得た財産といえるか)という点と、②分与割合をどのように判断するか(寄与割合をどのように考えるか)という点で問題が生じます。

 以下では、宝くじの当選金と競馬での獲得金について判断した裁判例を紹介します。

 

2、宝くじに関する裁判例

⑴事案の概要

・夫が自身の小遣いのうち、毎月2000円程度を宝くじの購入に充てていたところ、宝くじの当選により約2億円を獲得。

・離婚時には、当選金を原資とする預貯金と保険関係として約7200万円が夫名義の財産として存在。

・他の財産としては不動産も存在。

 

⑵原審の判断(前橋家裁高崎支部審判平成28年9月23日判時2360号11頁)

 原審は、「当選した宝くじの購入資金の原資が夫婦共有の財産である家計の収入であるとしても,当然に全額が夫婦の共有財産となるものではなく,当該宝くじを購入した者には,当該当選金について一定の優位性ないし優越性が認められるべきである」としたうえで、宝くじ当選金を原資とする預貯金と保険関係の財産について、7割を夫の固有財産とし、残りの3割のみを財産分与の対象財産としました。

 (不動産についても、同様に宝くじ当選金を原資として弁済した弁済金の7割を夫の固有財産とすることを前提に、不動産全体の6割に相当する金額を夫の固有財産としました。)

 その上で、分与割合については、2分の1としました。

⑶抗告審の判断(東京高決平成29年3月2日判例タ1446号114頁)

 これに対して抗告審は、「(本件宝くじの)購入資金は夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出され,本件当選金も家族の住居費や生活費に充てられたのだから,本件当選金を原資とする資産は,夫婦の共有財産と認めるのが相当である」として、全てが分与の対象財産となるとしました。

 その上で、分与割合については、「原審相手方(夫)が自分で,その小遣いの一部を充てて宝くじ等の購入を続け,これにより,偶々とはいえ当選して,本件当選金を取得し,これを原資として上記対象財産が形成されたと認められる」として、夫の寄与が大きいものとして、夫6対妻4の割合での分与を相当としました。

 (夫婦名義財産のすべてを6対4で分与としています。)

⑷原審と抗告審の違い

 原審は、まず①財産分与の対象財産となるかという点で、7割を夫の固有財産とし、残りの3割のみを財産分与の対象財産としました。そのうえで、②分与割合について、共有財産(上記の3割)については、2分の1の分与割合での分与としました。

 全体を100とすると、30が分与対象財産となり、そのうちの2分の1である15を妻が取得、夫が85を取得することとなります。

 他方で、抗告審は、①については、全体を財産分与の対象財産としたうえで、②の寄与割合については、夫6対妻4での分与としました。

 全体を100とすると、100全てを分与対象財産としたうえで、夫が60を取得、妻が40を取得ということになります。

 

3、競馬に関する裁判例(奈良家審家月54巻3号85頁)

⑴事案の概要

・夫が香港で購入した馬券が偶然当たって万馬券となり、日本円で1億9000万円の利益を得た。

・夫は、その一部を利用して,申立人ら家族の居住用に物件を約8000万円の即金で購入した。

・財産分与の対象となる財産は、上記の物件のみであった。

⑵裁判所の判断

 裁判所は、上記の物件が夫の特有財産に当たるかという点について、①万馬券が夫婦の婚姻中に購入されたものであること、②本件物件はもともと夫婦及び家族の居住用財産として購入され,現に12年もの間夫婦の生活の本拠として使用されてきたものであること、③万馬券というのは射倖性の高い財産で必ずしも相手方の固有の才覚だけで取得されたものともいえないこと、④万馬券が相手方の小遣いで購入されたものであるとしても,小遣いは生活費の一部として家計に含まれると考えることができることといった理由から、相手方の特有財産とみるのは相当ではないと判断しました。

 そのうえで、「馬券という射倖性の高い臨時の収入については相手方の運によるところが大きいので,本件物件取得については相手方の寄与が大きい」とし、その他妻の収入や生活扶助的な要素を考慮する必要もあることといった一切の事情を考慮して、本件物件の3分の1を(妻に対し)分与するのが相当であるとしました。

 

4、おわりに

 上記の裁判例は、あくまでも事例ごとの判断であり、必ずこのような分与割合になるといったものではありません。元となった金銭の出所等の個別事情によって、結論は変わり得るものと考えます。

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