離婚・男女問題

2024/07/13 離婚・男女問題

清算的財産分与における清算割合~2分の1ルールの修正について~

 

 本コラムでは、清算的財産分与における清算割合について、特に2分の1ルールが修正され得るケースについて説明します。

 

目次

1、2分の1ルール

2、例外が認められ得るケース

3、裁判例

4、おわりに

 

1、2分の1ルール

 清算的財産分与は、婚姻中に夫婦がその協力によって得た財産を婚姻の解消に当たって清算するものです。

 そして、清算的財産分与の分与割合については、清算的財産分与が夫婦の協力によって得た財産の清算である以上、分与対象である夫婦共同財産の取得及び維持に対する寄与割合に応じるものと考えられます。

 ここでの寄与は、財産取得への直接的、言い方を変えれば経済的な面での寄与のみならず、家事労働等での寄与も含まれます。

 実務上は、寄与割合については、基本的には2分の1ずつとする、いわゆる「2分の1ルール」が用いられています。もっとも、夫婦の他方に特別な資格や能力があり、それによって財産が形成された部分が大きいといった事情がある場合には、清算割合に差が出る場合もあります。

 以下では、清算割合が異なることがあるケースについて説明します。

 

2、例外が認められうるケース

⑴ 特別な能力等により所得が多いケース

 上記のとおり、清算割合は、夫婦共同財産の取得及び維持に対する寄与割合に応じますが、実務上は、寄与度の差が大きく、公平を欠くような特段の事情がない限りは、原則として2分の1ルールが採用されています。

 このような寄与度の差が大きいケースの一例としては、一方の配偶者が特別な能力や資格を有しており、或いは特別な努力をし、これによって、多額の財産が形成されたようなケースです。

 一例としては、医師や、スポーツ選手、経営者といったものが挙げられます。

 もっとも、これらはあくまでも一例であり、これらの職種であるから認められるというものではありませんし、当然ながら他の職種で認められないというものでもありません。

 

⑵ 貢献が著しく小さい(或いはマイナス)であるケース

 寄与度の差が大きく、公平を欠くようなケースとしては、一方の配偶者の寄与が著しく小さい、或いはマイナスであるような場合が考えられます。

 理由もなく相当長期間にわたって就労せずに、家事も行わなかったようなケースや、ギャンブルにより財産のほとんどを費消したようなケースがこれに当たります。

 

3、裁判例

⑴ 大阪高判平成12年3月8日判時174491

 夫が一級海技士の資格を有し、海上勤務を多く行っていたケースです。

 裁判所は、財産の形成(総額7600万円)夫が、「一級海技士の資格をもち、一年に六か月ないし一一か月の海上勤務をするなど海上勤務が多かったことから多額の収入を得られたことが大きく寄与している」とし、他方妻は主として家庭にあり、一人で家事、育児をしたものであることとその他一切の事情を勘案し、妻への分与割合を3割としました。

 また、妻側からの、夫の有する資格をもってその寄与度を高く評価するのは相当でないと主張については、「資格を取得したのは被控訴人(夫)の努力によるものというべきであり、右資格を活用した結果及び海上での不自由な生活に耐えたうえでの高収入であれば、被控訴人の寄与割合を高く判断することが相当である」としています。

 この裁判例では、資格への努力のほか、海上での不自由な生活に耐えたうえでの高収入であったことが考慮されています。

 

⑵ 大阪高判平成26年3月13日判タ1411177

 夫が医師であり、財産分与対象額が、3億円を超えていたケースです。

 裁判所は、「高額な収入の基礎となる特殊な技能が,婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて,婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合などには,そうした事情を考慮して寄与割合を加算することをも許容しなければ,財産分与額の算定に際して個人の尊厳が確保されたことになるとはいいがたい。」としたうえで、

 「控訴人(夫)が医師の資格を獲得するまでの勉学等について婚姻届出前から個人的な努力をしてきたことや,医師の資格を有し,婚姻後にこれを活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮して,控訴人(夫)の寄与割合を6割,被控訴人(妻)の寄与割合を4割とすることは合理性を有する」としました。

 もっとも、夫側の妻の寄与割合はせいぜい3割であるとの主張については、

「被控訴人も家事や育児だけでなく診療所の経理も一部担当していたことを考えると,被控訴人の寄与割合をこれ以上減ずることは,上記の両性の本質的平等に照らして許容しがたい」としてこれを退けています。

 この裁判例では、婚姻前の努力や、その資格を活かし多くの労力を費やして高額の収入を得ていることが考慮されています。

 

⑶ 東京家審平成6年5月31日家月47552

 夫婦は双方ともに芸術家としてそれぞれ活動していたものの、家事労働については、妻が別居期間を除き、約18年間専ら行ってきたという事案です。

 裁判所は、「財産分与は婚姻生活中の夫婦の協力によって形成された実質上の共有財産の清算と解するのが相当であるから,原則的に平等であると解すべきである。」とした上で、「申立人と相手方は芸術家としてそれぞれの活動に従事するとともに,申立人は家庭内別居の約9年間を除き約18年間専ら家事労働に従事してきたこと、及び、当事者双方の共同生活について費用の負担割合,収入等を総合考慮」し、妻の寄与割合を6,夫の寄与割合を4とするのが相当であると判断しました。なお、収入については、離婚前直近3年間の総収入は、妻が約2500万円に対し、夫は600万円という開きがありました。

 

4、おわりに

 以上、2分の1ルールが修正され得る場合について、説明しました。実務上は、2分の1ルールが原則とされており、例外的な場合に限られますが、事情や主張立証の仕方によっては認められるものですので、この点で悩まれている方は弁護士に相談されることをお勧めします。

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