相続・遺言

2024/07/11 相続・遺言

特別寄与料について

 

 本コラムでは、特別寄与料について、その概要を説明します。

 

目次

1、はじめに

2、特別寄与料の請求が認められる場合

3、特別寄与料の算定方法

4、請求の相手方

5、相続人の負担割合

6、特別寄与料の上限

7、請求の方法

8、おわりに

 

目次

1、はじめに

 被相続人の介護等を行った相続人については、それが「寄与分」(民法904条の2)の要件を満たせば、遺産分割手続きにおいて、これが考慮されて具体的な相続分を決めることが可能です。しかしながら、これは「相続人」に限られていたため、例えば相続人の配偶者が生前被相続人の介護を行っていたような場合であっても、当該配偶者の寄与は寄与分として考慮されませんでした。(例外的に、相続人の履行補助者の寄与として相続人の寄与分の算定において考慮されることはありました。)

 そのため、民法改正により、このような者であっても、一定の要件を満たす場合には、その者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)を相続人に対し、請求できるとする規定が新設されました。

 以下、特別寄与料の請求が認められる場合について説明します。

 

2、特別寄与料の請求が認められる場合

⑴被相続人の親族であること

 特別寄与料の請求をできる者は、被相続人の親族です(民法10501項)。

 親族とは、六親等内の血族、②配偶者、③三親等内の姻族です(民法725条)。なお、上記の親族であっても、相続人、相続放棄をした者、相続人欠格事由に該当する者、相続人廃除によって相続権を失った者は除かれます。

 そのため、被相続人の親族でないものが、特別寄与料の請求をすることはできません。

 

⑵無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと

 特別寄与料の請求が認められる「寄与」は、「療養看護その他の労務の提供」に限られます。療養看護は例示であり、労務の提供に限られると理解したほうがわかりやすいかもしれません。

 具体的には、無償で被相続人の看護を行った場合や、被相続人の家業に無償で従事していたような場合がこれに当たります。

 相続人の寄与分(民法904条の2)において、考慮される寄与行為には、その他金銭出資といったものも含まれますが、特別寄与料の「寄与」としては対象とされません。

 また、寄与行為は「無償」であることが要件となり、対価を得ていたような場合には、認められません。もっとも、交通費等実費レベルの支払いであれば、無償とされるものと考えられます。

 

⑶⑵が「特別の寄与」であること

ア 「特別の寄与」の程度

 ⑵の寄与行為は、「特別の寄与」と認められる程度のものであることが求められます。

 なお、「寄与分」(民法904条の2)において求められる寄与は、被相続人と相続人との身分関係に基づいて行うことが通常期待される程度を超える特別の貢献とされますが、特別の寄与の場合は、前提となる身分関係が異なる(具体的には、民法上の扶養義務を負わないものが含まれる)ことから、これとは異なり、一定程度を超える寄与を要求するものと考えられます。

 もっとも、寄与分の判断に当たって考慮される要素については、特別の寄与についても同様に考慮されると考えられるため、以下では、寄与分の判断に当たって求められる事項を、寄与類型別に挙げていきます。

 

イ 療養看護型

①特別な貢献であること

②無償であること(無報酬や対価とは認められない低額な費用であること)

③一定期間継続して行われていること

④片手間ではなくかなりの負担を要していること

⑤被相続人にとって必要なものであること

 介護の場合には、被相続人が要介護2以上の状態であることが、一つの目安とされています。

 主張の裏付けとなる資料としては、要介護認定通知書、診断書、介護サービス利用表、医療機関の診断書といったものが考えられます。

 

ウ 家業従事型

①特別な貢献であること

②無償であること(無報酬や対価とは認められない低額な費用であること)

③一定期間継続して行われていること

④片手間ではなくかなりの負担を要していること

 なお、被相続人の営む会社への労務提供については、会社への寄与であるため、原則として特別寄与料の請求はできません。

 主張の裏付けとなる資料としては、確定申告書や給与明細(給与台帳)といったものが考えられます。

 

⑷⑵により被相続人の財産が維持または増加したこと

 特別寄与料は、「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族」に認められるものですので、寄与行為の結果として被相続人の財産が維持又は増加したという因果関係が必要となります。

 なお、寄与行為によって、支出を免れたというような場合(財産減少を防いだ場合)にも、財産の維持への寄与は認められます。

 

3、特別寄与料の算定方法

⑴ 療養看護型

 特別寄与料は当事者の協議によってその額を定めることができますが、療養看護型の特別寄与料の算定方法は、実務上、次のような算定方法が参考とされています。

特別寄与料=介護報酬相当額×療養看護の日数×裁量割合

 ここでいう裁量割合とは、当該寄与行為者が看護や介護の専門家ではないことから、修正のために用いるものであり、0.5から0.8の裁量割合が乗じられます。

 

⑵ 家業従事型

 家業従事型については、次のような算定方法が参考にされます。

 特別寄与料=通常得られたと考えられる給与額×(1−生活費控除率)×寄与期間                                                                                                                                        

 通常得られたと考えられる給与額については、賃金センサスが参考にされることが多く、生活費控除については、被相続人が当該寄与者の生活費を負担していたような場合に控除するものです。

 

4、請求の相手方

 特別寄与料は、相続人に対して、請求できるものです。

 複数の相続人がいる場合にも、相続人全員に対して請求する必要はありません(一人又は複数に対して請求することができます。)

 

5、相続人の負担割合

 各相続人は、法定相続分に応じて(相続分の指定がなされている場合には、指定相続分に応じて)、特別寄与料の負担をすることになります。

 具体的相続分に応じたものではないことに注意が必要です。

 

6、特別寄与料の上限

 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時に有していた財産の価額から、遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません(民法1050条4項)。

 

7、請求の方法

 特別寄与料は、特別寄与料の支払いは当事者間の協議によって決めることができます。

 また、協議が調わないとき、或いは協議をすることができないときには、「特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる」ものとされています。

 そのため、協議が調わないような場合には、家庭裁判所に申立てをすることができます。もっとも、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。」とされており、申立ては、相続の開始及び相続人を知った時から6カ月以内及び相続開始の時から1年以内にする必要があります。

 

8、おわりに

 以上、特別寄与料について概要を説明しました。個別のケースで、寄与が認められるか、認められるとしていくらになるのかといった点については、一度弁護士に相談されることをお勧めします。        

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