2024/07/06 離婚・男女問題
裁判上の離婚が認められる別居期間の目安について
本コラムでは、裁判上の離婚が認められる別居期間の目安について説明します。
目次
1、はじめに
2、別居期間の目安
3、裁判例
4、例外
5、おわりに
1、はじめに
離婚は両当事者の合意があれば、することができます(民法763条)が、一方当事者が離婚を拒んでいる場合など、当事者間で合意に至らない場合には、協議による離婚はできません。
そして、協議による離婚ができない場合には、裁判による方法がありますが、離婚の判決がされるためには、法が定める離婚事由が存在する必要があります(民法770条)。
民法が定める離婚事由としては、以下の5つの事由があります。
・配偶者に不貞な行為があったとき(1号)
・配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)
・配偶者の生死が三年以上明らかでないとき(3号)
・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(4号)
・その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)
1号から4号に当たる場合には、これが離婚事由となりますが、これら以外の理由の場合には、5号「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当てはまるケースであるとして、離婚の請求がされることになります。
「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態を意味するものと捉えられており、判断に当たっては、破綻(として主張されている事由)の原因、経緯、婚姻期間、双方の事情、双方の婚姻継続の意思、別居の有無、別居の期間といった点等が考慮されます。
このような考慮事由の中でも、別居期間は婚姻関係の破綻及び回復の見込みがないことを判断する事情として、離婚が認められるかの判断を左右する大きな事情の一つとされています。
2、別居期間の目安
別居期間の目安としては、3年から5年という年数が挙げられることがあります。
平成8年に法制審議会から出された、「民法の一部を改正する法律案要綱」においても、離婚事由として「(エ)夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。」が掲げられており、このような改正案が検討されていました。
裁判例においても、3年未満では否定されているケースが多くみられる一方で、5年を超えると、離婚が認められているケースが多くみられます。
もっとも、5年であれば必ず離婚が認められるといったものではなく、あくまでも上述した破綻(として主張されている事由)の原因、経緯、婚姻期間、双方の事情、双方の婚姻継続の意思といった個別事情を踏まえて、婚姻関係の破綻及び回復の見込みが判断されるものとなります。
実際、約1年の別居期間で離婚を認めた裁判例(下記⑴)や、別居期間が6年であっても否定された裁判例(下記⑵)もあります。
また、厳密には、婚姻関係の破綻及び回復の見込みを判断する事情となるのかは微妙なところとも思えますが、子の有無や年齢、意向、離婚後の配偶者の生活といった点が考慮されることもあります。
3、裁判例
以下では、別居期間が短期間でも離婚が認められたケースと、長期間でも否定されたケースを紹介します。あくまでも例外的なものであることにはご留意ください。
⑴短期間で認めたケース
・大阪高判平成21年5月26日家月62巻4号85頁
ア 概要
・別居期間1年
・夫80歳
・妻が夫の朝食や昼食の準備をしない。
・妻が夫をリビングに出入りさせず、一人で食事をとらせる。
・長年仏壇に祀っていた先妻の位牌を取り除いて親戚に送り付ける
・夫の青春時代からのかけがえない想い出の品(アルバム10数冊)を焼却処分する
イ 裁判所の判断
裁判所は、別居期間が1年余であることなどを考慮しても、夫と妻との間には婚姻を継続し難い重大な事由があると認められる判断しました。
⑵比較的長期間であっても否定されたケース
・東京地判平成16年4月26日
ア 概要
・婚姻期間約18年
・別居期間約6年
・子2人
・夫が家を出る形で別居
・その後、夫は妻に赴任先を教えずに海外に赴任、連絡もほとんど取れず
・夫は、離婚原因を様々(精神的虐待、侮辱、性交渉拒否等)主張も、客観的証拠なし
イ 裁判所の判断
裁判所は、別居するようになってから6年余の期間が経過しているが、この点を考慮してみても、原告(夫)の主張する離婚事由が全く認められないことに照らすと、原告(夫)の本件離婚請求はその理由のないことが明らかとして、離婚請求を認めませんでした。
4、例外
有責配偶者からの離婚請求においては、より長い期間の別居を要するものとされます。
また、770条1項1号から4号に該当する場合、つまり不貞や悪意の遺棄等が認められる場合には、これを離婚事由として、別居期間が短くとも離婚が認められる場合があります。
5、おわりに
離婚請求が認められるかの判断に当たって、別居期間は重要な一事情となるものですが、これのみで決まるものではありませんので、悩まれている方は一度弁護士に相談されることをお勧めします。