2024/06/30 離婚・男女問題
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(民法770条1項5号)について
本コラムでは、離婚事由としての「その他婚姻を継続し難い重大な事由」について、簡単に説明します。
目次
1、はじめに
2、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
3、具体例
⑴暴力
⑵暴言や重大な侮辱
⑶うつ病・精神病
⑷性生活の問題
⑸犯罪行為
⑹性格の不一致
⑺過度な宗教活動
⑻不労・浪費
4、おわりに
1、はじめに
離婚は両当事者の合意があれば、することができます(民法763条)が、一方当事者が離婚を拒んでいる場合など、当事者間で合意に至らない場合には、協議による離婚はできません。
そして、協議による離婚ができない場合には、裁判による方法がありますが、離婚の判決がされるためには、法が定める離婚事由が存在する必要があります(民法770条)。
民法が定める離婚事由としては、以下の5つの事由があります。
・配偶者に不貞な行為があったとき(1号)
・配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)
・配偶者の生死が三年以上明らかでないとき(3号)
・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(4号)
・その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)
2 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
770条1項1号から4号の離婚事由に該当しなくとも、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(770条1項5号)には、離婚事由が認められます。
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態を意味するものと捉えられています。
以下では、この5号に該当し得る具体例を挙げていきます。なお、ここに記載がないものであっても「その他婚姻を継続し難い重大な事由」と認められる場合はありますので、その点はご注意ください。
3、具体例
⑴暴力
暴力は、基本的には「婚姻を継続し難い重大な事由」となり得るものであり、これを認めた裁判例も多く存在します。直接的な暴力でなくとも、物を投げる、壁を叩くといった暴力であっても同事由に当たり得るものですし、子に対する暴力も婚姻を継続し難い重大な事由になり得ます。
もっとも、およそ暴力があれば全てのケースで離婚が認められるというものではなく、その暴力が他方配偶者の行為を原因とするものである場合や、他方配偶者に誘発する要因があったような場合には、認められないケースもあります。
⑵暴言・重大な侮辱
暴言や重大な侮辱も離婚事由として認められる場合があります。直接本人にするもののほか、配偶者の職場で行った配偶者を中傷する発言が離婚事由として考慮された裁判例もあります。
⑶うつ病・精神病
当然に婚姻を継続し難い重大な事由があるものとはいえませんが、配偶者に過度な犠牲を強いるようなものである場合や、これにより夫婦関係が破綻し協力扶助義務を果たすことができなくなったような場合には、離婚請求が認められる場合があります。
裁判例においては、病の原因(他方配偶者にあるものかという点も含む)、病が他方配偶者に与える影響(他方配偶者への暴行・暴言含む)、病者の離婚後の経済状況や、他方配偶者の支援の意向及び内容(過去の実績も含む)といった点が考慮されます。
精神的障害のケースでの判断においては、「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(770条1項4号)が問題となる場合に、判例において示された、①病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じること、②ある程度において、前途にその方途の見込みのついた上でなければならないという考え方(具体的方途論)を意識する必要があります。
⑷性生活の問題
異常な性行為の要求や性交渉の強要は、婚姻を継続し難い重大な事由となり得ます。
性交不能も離婚事由となり得るもので、実際、このようなケースで、離婚請求を認めた裁判例も存在します。
性交渉の拒否も事案によっては、破綻事由の一つとなり得ます。
⑸犯罪行為
犯罪行為が配偶者や家族に向けられたような場合には、上記⑴や⑵と同様の問題となります。
他方で、直接配偶者に対するものではない場合については、直ちに離婚原因となるものとは考えられていません。もっとも、家族の生活に支障を与えたり、犠牲を強いるものであり、信頼関係も喪失され得ることから、離婚請求が認められる場合があります。
⑹性格の不一致
性格の不一致はそれのみで直ちに離婚事由となるものではありません。もっとも、別居期間や離婚意思、相手方配偶者の意向、子の意向等の事情が考慮されたうえで、離婚が認められるケースはあります。
⑺過度な宗教活動
信仰や宗教活動の自由は、個人間においても尊重されるべきものであり、夫婦において もこれは同様ですが、夫婦間においては、共同生活を営む以上、互いに相手に価値観や考え方、立場を尊重して夫婦関係の円満を保つ必要があり、この点で、限界があります。
そのため、夫婦の一方が自己の信仰の自由の実現を過度に相手方に強いたり,宗教活動に傾倒するなどした結果、夫婦関係が悪化し,婚姻関係を継続し難い状態に至ったような場合には,離婚原因を構成することがあります。
裁判例においては、宗教活動への参加の程度(頻度や回数)、具体的内容、信仰心の程度、・当該宗教活動の家庭生活への影響(協力義務への影響)、子どもへの影響(巻き込んでいるか否か)、相手方配偶者の宗教活動に対する理解、相手方配偶者への配慮、宗教活動を自制・改める意向の有無、別居期間といった点が考慮されています。
⑻不労・浪費
不労や浪費についても、婚姻関係破綻の原因となる場合があります。
定職に就かずに怠惰な生活を続けていたケースや、収入不相応に浪費、借財を重ねたケース等で離婚請求を認めた裁判例があります。
4,おわりに
以上、離婚原因が認められる具体例をいくつか挙げましたが、実際には、上記の複数が合わさって離婚原因となることや、上記にない事由が離婚原因となることもあります。また、特定の類型であれば必ず認められるといったものではなく、個別事情を踏まえて判断する必要があります。そのため、離婚事由で悩まれている方は、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。