離婚・男女問題

2024/06/29 離婚・男女問題

「モラハラ」が離婚事由に当たる場合とは?

 本コラムでは、いわゆる「モラハラ」が離婚事由(民法77015号)に当たる場合について、説明します。

 

1、はじめに

2、「モラハラ」とは

3、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる場合

4、裁判例の紹介

5、おわりに

 

 

1、はじめに

 民法上、離婚は当事者が合意をすることにより、することができます(民法763条)。他方で、一方当事者が離婚を拒んでいる場合など、当事者間で合意に至らない場合には、協議による離婚はできません。一方当事者が離婚する意思を固め、これを通知したとしても、離婚することはできません。

そして、協議による離婚ができない場合には、裁判による方法がありますが、離婚の判決がされるためには、法が定める離婚事由が存在する必要があります(民法770条)。

 いわゆる「モラハラ」については、民法においてこれが明文で離婚事由とされているものではありません。もっとも、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法77015号)に当たるとして、離婚が認められる場合があります。

 

2、「モラハラ」とは

 いわゆる「モラハラ」とは、一般に、態度や言動により、相手を精神的に追い詰める行為であるという理解をされています。

 もっとも、前述のように、民法において何か「モラハラ」の定義があるわけではなく、「モラハラ」が離婚事由として明記されているというものではないため、「モラハラ」に当たるか否かという問題よりも、具体的にどのような行為が行われているのか、それが夫婦関係にどのような影響を及ぼしているのか、という点が重要となってきます。

 したがって、個々の具体的事実を基に検討し、次に述べる「婚姻を継続し難い重大な事由」の該当性を判断していく必要があります。

 

3、「婚姻を継続し難い重大な事由」(77015号)

 「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態を意味するものと捉えられています。

 判例(最判昭和62年9月2日民集41巻6号1423頁)によれば、「婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもつて共同生活を営むことにあるから、夫婦の一方又は双方が既に右の意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態に至った場合」であるとされます。

 個別事情を踏まえて、当該婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態であるかという点から判断されます。

 また、婚姻が破綻しているかという点とは直接には関係しないようにも思えるかもしれませんが、当事者の年齢、子の有無及び年齢、子の意向、職業や収入面、離婚後の生活といった点も考慮される場合もあります。

 以下、いわゆる「モラハラ」が考慮要素となり、婚姻を継続し難い重大な事由に当たる場合について、裁判例を紹介します。

 

4、裁判例の紹介

⑴ 東京地判平成17315

 夫の行為としては、以下のようなものがありました。なお、以下の行為は一部です。

・気に入らないことがあると,感情を爆発させ,暴言を繰り返し,執拗に原告を責め続けること

・激高すると,原告の頭や顔を殴ったり,蹴ったりすること

・妻の持病に対して、「さっさと心臓移植でもしてこい。」などの暴言を浴びせたこと

・妻が退院して帰宅した夜に,一晩中,廊下に座らせ,文句を言い続けたこと
・一時期から、連日のように午前3時から5時ころになると,妻に対し,食事を作ることを要求し,すぐに従わないと怒りを爆発させ,テーブルをたたいたり,床を蹴ったりするなどしたこと。

・妻の前のテーブルをたたき,眠らせず,午前6時ころまで夫の世話をすることを要求したこと

 裁判所は、長年にわたる夫の妻に対する身体的精神的虐待によって妻の意思が夫から離反して家出し,別居が継続してもはや修復の余地がなくなっているとして、婚姻を継続し難い重大な事由を認めました。

 

⑶ 横浜地判昭和59年2月24日判タ528290

 妻の原告に対する侮辱的言動が、連日のように続いたケースです。言動の例としては、突然「いじめられた。」「結婚して損をした。」「原告が実母とべつたりだ。」といったような具体性のない非難を並べたことや、「威張るな。」「ばか、何を言いやがる。」というものが挙げられています。また、夫が妻に対して小遣いの増額を求めたところ、同様の暴言を吐いたこと、妻が夫と食事、寝室を別にし、そのため原告は家庭内で孤立し、子供たちと話をしたことがない程に疎外されたこと、妻が夫の母親に対して「ばばあ、早く死んでしまえ。」とどなりつけことといった事情もありました。

 裁判所は、このケースで「婚姻を継続し難い重大な事由」(77015号)を認めました。

 

⑶ 大阪高判平成21年5月26日家月62巻4号85頁

 妻の夫に対する行為には、以下のようなものがあった事案です。なお、夫は80歳を超えていました。

・朝食や昼食の準備をしない。

・リビングに出入りさせず、一人で食事をとらせる。

・長年仏壇に祀っていた先妻の位牌を取り除いて親戚に送り付ける

・夫の青春時代からのかけがえない想い出の品(アルバム10数冊)を焼却処分する

裁判所は、別居期間が1年余であることなどを考慮しても、夫と妻との間には婚姻を継続し難い重大な事由があると認められる判断しました。

 

5,おわりに

 配偶者のいわゆる「モラハラ」を理由に離婚が認められるのかについては、裁判例及び個別事情を踏まえて検討する必要がありますので、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

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