2024/06/19 不動産
共有不動産の共有関係解消方法について
本コラムでは、共有不動産の共有関係を解消する方法について、簡単に説明します。
目次
1、共有不動産について
2、共有関係解消の方法
⑴共有持分の処分
⑵他の共有者の共有持分の買取り
⑶共有不動産の売却
⑷現物での分割
1、共有不動産について
一つの不動産について、複数人の所有者がいる状態を共有状態といい、共有状態にある不動産を共有不動産といいます。
共有不動産については、各所有者が自らの持ち分に応じて共有持分権を有している状態となります。
共有不動産全体を売却するためには、共有者全員の同意が必要となり(民法251条1項)、例え過半数の持分を有している共有者であっても、単独で共有不動産全体を処分(売却)することはできません。
また、第三者に賃借するにあたっても、持分価額の過半数の同意(民法252条1項)が必要となります。さらに、借地借家法の適用がある賃貸借や、短期賃貸借(民法602条)の期間を超える場合には、過半数では足りず、全員の同意が必要とされます[1]。
その為、共有不動産においては、処分や管理方法で意見対立が生じた結果、共有関係の解消を巡って問題となるケースが見られます。
本コラムでは、共有関係の解消方法について説明します。
2、共有関係解消の方法
共有関係の解消には、大きく分けて、①自身の共有持分を処分し、共有関係から離脱する方法、②他の共有者の共有持分を買い取る方法、③共有物全体を売却する方法、④現物で分割する方法があります。
⑴共有持分の処分
共有持分の処分の方法としては、①売却、②贈与、③放棄の三つが考えられますが、経済的価値を有する物件であれば、①売却を選択されることが多いものと思います。
売却については、①他の共有持分権者に売却する方法と、②第三者に売却する方法があります。
他の共有持分権者への売却と第三者への売却のいずれも、法的には売買契約となりますので、売主と買主の間での合意があれば、売却することが可能です。
共有持分は、各共有権利者が自由に処分することができ、売買の当事者とならない他の共有持分権者の同意を取る必要はありません。
なお、②贈与をした場合には、受贈者が新たな共有者となり、③放棄をした場合については、その持分は他の共有者に帰属することとなります(民法255条)。
⑵他の共有者の共有持分の買取り
自身が共有不動産の所有を続けたいと考える場合には、他の共有者の共有持分を買い取り、共有関係を解消する方法があります。
持分の売却は基本的に任意ですので、売却を望まない他の共有者は、原則として共有持分の売却を拒むことができ、自身が提示する価格で強制的に取得するといったことはできません。
もっとも、共有物分割請求訴訟において、賠償分割(全面的価格賠償)の方法による分割が認められた場合には、判決により、代償金と引き換えに他の共有者の共有持分を取得することができることになります。
詳しくは、「共有物分割請求とは~概要と分割方法について~」https://t-leo-law-kashiwa.com/column/335/をご覧ください。
⑶共有物全体の売却
厳密には、共有関係の解消とは異なるかもしれませんが、共有不動産を共有者全員で売却する方法もあります。
共有者全員の同意がなければ売却はできませんが、交渉により、同意が取れれば売却することが可能です。
また、共有物分割請求訴訟において、現物分割及び賠償分割ができない或いは現物分割の方法をとった場合に著しく価格を減少させるおそれがある場合に、競売分割を命じられることがあります。
⑷現物での分割
共有不動産を現物で分ける方法となります。
土地を分筆する場合や、土地建物双方が共有である場合に、建物を区分所有化、土地は敷地権化する場合等がこれに当たります。
複数の不動産が共有である場合には、それぞれの不動産を単独所有とする形で分割する場合もあります。
[1] この点については、「持分権の過半数によって決することが不相当とはいえない事情がある場合には、長期間の賃貸借契約の締結も管理行為にあたる」とした裁判例(東京地判平成14年11月25日判時1816号82頁)も存在します。