不動産

2024/09/11 不動産

ガソリンスタンドの土地賃貸借と借地借家法の適用について

 

 本コラムでは、ガソリンスタンドの土地賃貸借と借地借家法の適用について説明します。

 

1、土地賃貸借における借地借家法の適用について

2、ゴルフ練習場の土地賃貸借を巡る裁判例の紹介

 

1、土地賃貸借における借地借家法の適用について

 土地の賃貸借について、借地借家法の適用対象となるには、土地賃貸借契約が「建物の所有を目的とする」ものであることが要件となります。

 判例(最判昭和42125日民集21102545頁)においては、「建物の所有を目的とする」とは、「借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し、これを所有することにある場合」とされており、建物所有が主たる目的である必要があります。

 以下では、ガソリンスタンドの土地賃貸借契約に借地借家法の適用があるかが争われた裁判例を紹介します。

 

2、ガソリンスタンドの土地賃貸借を巡る裁判例の紹介

⑴否定事例

・東京高判平成1443

ア 事案の概要

 土地の賃貸借契約終了に基づき地上のガソリンスタンド施設等の収去と土地の明渡を求めた事案で、土地の賃貸借契約につき、借地借家法の適用の有無が問題となった事案です。

 賃貸借契約書には、①対象土地をガソリンスタンド用地として使用する、賃貸借期間は五年間として五年毎に契約を更新する、と明記されており、「建物ノ所有ヲ目的トスル」ことを窺わせる記載はありませんでした。
 また、対象土地の上には、ガソリンスタンドが存在し、雨が降っても作業ができるようにキャノピー(赤い屋根模様の設備)、販売店舗、事務所(四・五坪程)、地下タンク(基礎を造り、鋼材製のタンクをコンクリートで固め地下に固定する)、計量器、洗車機等が備えられていました。なお、事務所等の建物の敷地面積は、対象土地の面積に比べて僅かでした。

 

イ 裁判所の判断

 原審(浦和地判平成12929日)は、上記の事実を認定の上、本件賃貸借契約の主たる目的がその地上に建物を所有することにあるとはいえず、旧借地法の適用対象とはならないことは明らかであると判断しました。

 控訴審は、「一定範囲の土地をガソリンスタンドとして使用する場合、セルフサービスないしコイン投入方式で貯蔵タンクと給油設備以外の建造物を必要としない場合は別として、ある程度の規模の事務所用の建物を設置するのが普通であり、その用途としては、事務机、椅子等の什器備品や料金の計算、請求等のための事務用機器等を設置して従業員が必要な事務を執り行うのを中心とし、その他の工具、機器類の保管、従業員の休憩、販売用の自動車関連商品の保管展示、便所の設置等を挙げることができるが、給油という本来の業務に使用される限りにおいて必要不可欠な施設であるということができる。また料金の計算、請求等の事務用機器は最近においてはコンピューターの利用を中心としたものに変わりつつあり、これを給油設備と機能的に連結するものとして保守稼働させるためには一定規模の建物が必要であり、ガソリンスタンドにおける事務所建物の機能、効用に多少とも変化が生じていることは否定できない。」として、施設の必要性等の変化について触れました。

 しかしながら、その上で、

「しかし、ガソリンスタンド用の土地の利用という点では、一般的には、その全体に占める割合において事務所建物の敷地部分はさほど大きいものとはいえず、またその目的においても、給油業務という本来の目的に比べると事務所建物の所有自体は依然従たるものにとどまっているというべきである。」述べ、

 賃借人がガソリンスタンド業務を開始した昭和41年当時は、コンピューター化というような事情はなかったことや、事務所建物を含めガソリンスタンドの施設設備は最小限のものにとどまっていたと推測されること等から、特に事務所建物の所有を主たる目的としてその敷地である土地の賃貸借契約を締結するという意識はその時点において契約当事者の主観にはなく、また客観的にもそのような目的の存在を基礎づける事実関係はなかったとみるのが相当であるとして建物所有目的を否定しました。

 

ウ 解説

 本事案で、裁判所は、最終的には個別事情から建物所有目的を否定しましたが、ガソリンスタンドとして使用する場合にある程度の規模の事務所用建物を設置するのが普通であることや、一定規模の建物の必要(となってきていること)にも触れており、事案によっては、契約書の記載や、敷地における建物の占める割合等によっては、建物所有目的が認められる場合もあり得るものと考えます。

 

⑵肯定事例

・東京地判昭和4445

 ガソリンスタンドの為の土地使用につき、主目的が問題となった事案です。

 裁判所は、

・土地使用承認に際し、地上に建物を設置する場合には原告の承認を得て施行することとされたこと、実際に建築された建物は建築面積八・二三坪(の鉄筋コンクリート造平家建建物で工具室、販売室等を有するものであること

・ガソリンスタンド経営のためには従業員の控室あるいは商品、工具置場等に当然建物が必要とされるし、その主たる販売品であるガソリンの貯蔵のため通常地下タンクを要し、現に被告は本件土地中に敷地面積合計三〇平方米の地下タンク三基を所有することは当事者間に争いがなく、このタンクは営業品を貯蔵する地下倉庫と同視さるべきであり、これ自体建物の一部というを妨げないと考えられること

といった事情から、本件土地使用は建物所有を目的とするものと解するのが相当であると判断しました。

 もっとも、本件契約は、一時使用のための使用関係が各継続使用承認の都度設定されてきたものであるとして、借地法の適用自体は否定しています。

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