2024/09/07 相続・遺言
遺言執行者の職務について
本コラムでは、遺言執行者の職務内容と権利義務について説明します。
1、遺言執行者とは
2、遺言執行者の職務内容
3、遺言施行者の権利義務
1、遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言者に代わって、遺言者の意思を実現するために、遺言の内容実現に向けて必要な一切の事務を行う者をいいます。
遺言の効力が発生した時点で、遺言者は既に死亡しているため、遺言者の意思を実現するために遺言者に代わって遺言を執行する者が必要となるため、設けられています。
遺言執行者は、自然人に限らず、法人でもなることができ、遺言による指定(及び指定委託者による指定)により又は家庭裁判所による選任によって、就職することができます。
2、遺言執行者の職務内容
遺言執行者は、上記のとおり、遺言の内容を実現することをその職務内容とします。
具体的には、認知や廃除などの身分事項に関わる行為、財産の管理、登記の移転、預貯金の解約、目的物の引渡しといったものが挙げられます。
遺言執行者は、就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならないとされ(民法1007条1項)、任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(民法1007条2項)。
また、遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならならず(民法1011条1項)、遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって、相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければなりません(民法1011条2項)。
3、遺言施行者の権利義務
民法1012条1項は、「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定しており、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。
明文で定められているものとしては、
・遺贈の履行(民法1012条2項)
・特定財産承継遺言があったときにおける対抗要件を備えるために必要な登記等の行為(民法1014条2項)
・特定財産承継遺言の目的物が預貯金債権である場合には、預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れ(民法1014条3項)
・遺言によって相続排除がなされた場合の申立て
・遺言による認知の場合の、認知の届出
といったものが挙げられます。
また、民法1012条3項は、「第六百四十四条、第六百四十五条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。」と規定しており、委任に関する規定の一部が適用されます。
具体的には、遺言執行者は、遺言者の地位を承継した相続人に対し、善管注意義務(644条)、報告義務(645条)、受け取った物の引渡・移転義務(646条)、金銭消費についての責任(647条)を負い、費用償還請求権(650条)を有します。