相続・遺言

2024/08/31 相続・遺言

持戻し免除の意思表示とは

 

 本コラムでは、持戻し免除の意思表示について説明します。

 

1、特別受益とは

2、持戻し免除の意思表示

3、持戻し免除の意思表示の推定

4、遺留分侵害額請求との関係

 

 

1、特別受益とは

 特別受益とは、一部の相続人が被相続人から受けていた特別の利益のことを言い、民法は、その様な相続人が存在する場合に、当該相続人が受けた特別の利益の額を考慮して当該相続人の具体的相続分を減らすという仕組みを設けています。

 一部の相続人が、被相続人から遺産の前渡しとみられる多くの財産を既に得ているにもかかわらず、これが考慮されずに法定相続分に応じて遺産の分割が行われることは、実質的に相続人間に不公平をもたらすことになる為です。

 

2、持戻し免除の意思表示

 もっとも、民法第903条第3項は、「被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う」と定めており、被相続人が、相続人が、遺産分割において、特別受益を持戻す必要がない旨の意思表示をしていた場合には、持戻しが不要となります。

 特別受益の持戻しは、そもそも、被相続人は、通常、共同相続人間の不均衡を望まないだろうという被相続人の意思の推定に基礎を置くため、被相続人が共同相続人間の不均衡の是正を望まないという意思を有するのであれば、そのような意思を尊重してよいと思われるためです(潮見佳男編「新注釈民法(19)相続(1)〔第2版〕」(有斐閣、2023322(本山))。

 持戻し免除の意思表示は、明示のものでなく黙示のものであっても足ります(※「遺贈」については遺言によって持戻し免除の意思表示をしなければならないとする見解もあります)。

 黙示であっても、生活保障を目的とした贈与や、相続人全員への贈与、家業承継の必要がある場合等には、持戻し免除の意思表示が認められやすいものと考えられています。

 被相続人の生前行為等から黙示の意思表示が推認されることもあります。

 

3、持戻し免除の意思表示の推定

 配偶者に対する遺贈又は贈与については、「婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」(民法9034項)とされ、婚姻期間が20年以上の夫婦であって、居住用不動産の遺贈又は贈与をした場合には、持ち戻し免除の意思表示が推定されます。

 

4、遺留分侵害額請求との関係

 遺産分割においては、上記のように特別受益の持戻し免除の意思表示が認められれば、特別受益を考慮せずに遺産分割が行われます。

 もっとも、遺留分侵害額請求の場面では、持戻し免除の意思表示がされたとしても、それは遺留分を侵害しない範囲で効力を有することになります。

 これは、遺留分侵害額請求の場面においても持戻し免除をすべて認めると、(被相続人が財産をすべて一人の相続人に贈与又は遺贈し且つ持戻し免除の意思表示を行ったような場合に、)遺留分権利者であっても、何も財産を取得できない相続人が生ずることになり、著しい不均衡が生ずるためです。

 

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