離婚・男女問題

2024/08/19 離婚・男女問題

婚姻費用とは

 

 本コラムでは、婚姻費用について簡単に説明します。

 

1、婚姻費用とは

2、婚姻費用の分担額の決定

3、有責配偶者と婚姻費用

4、婚姻費用の負担期間

 

 

1、婚姻費用とは          

 民法760条は、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めており、婚姻共同生活の維持費用である婚姻費用を夫婦が分担すべきであるとしています。

 婚姻費用とは、具体的には、夫婦および未成熟子を含む婚姻共同生活を営むうえで必要な一切の費用を指し、衣食住の費用はもとより、医療費、娯楽費、交際費、老後の準備(預金や保険)、さらには未成熟子の養育費と教育費などが広く含まれる(泉久雄『親族法』111頁(有斐閣、1997))ものとされています。

 夫婦は、自身と同等程度の生活を保持する義務(生活保持義務)を負っているためです。

 婚姻費用は、多くの場合、別居期間中の生活費の負担という形で、問題になります。

 

2、婚姻費用の分担額の決定

 婚姻費用の具体的な分担額については、夫婦間の合意により定めることができます。

 もっとも、当事者間で合意が成立しないような場合には、家庭裁判所における調停或いは審判手続きにより、分担額が決定されます。分担額の決定に当たっては、「資産、収入その他一切の事情」が考慮されることになります。

 実務上は、基本的には夫婦それぞれの収入をベースにして決定されています。特に、東京と大阪の裁判官による司法研究の研究報告として提案された標準算定方式・算定表(令和元年版)が参考にされます。

 これは、夫婦の収入(自営業者・給与所得者別)や、子の人数及び年齢毎に婚姻費用及び養育費の大まかな金額を表にしたものです。

 もっとも、常に算定表のとおりになるものではなく、算定表で考慮されている教育費を上回る私立学校等の学費が認められる場合等、特別な事情がある場合には、これを考慮して金額が定められることもあります。

 

3、有責配偶者と婚姻費用

 勝手に配偶者が家を出ていった場合や、配偶者が不貞行為を行った等有責配偶者である場合に、婚姻費用分担義務を負うのかが問題となることがあります。

 まず、勝手に家を出て行ったような場合であっても、そのことのみで婚姻費用分担義務を負わない(その者に支払わなくてもよい)ということではないと考えられています。

 他方で、不貞行為等有責配偶者からの婚姻費用分担請求については、養育費に当たる部分は別として、自身の生活費に当たる部分は信義則違反或いは権利濫用として認められないことがあります。

 裁判例(大阪高決平成28317日)においても、不貞が認められた事案で、「夫婦は,互いに生活保持義務としての婚姻費用分担義務を負う。この義務は,夫婦が別居しあるいは婚姻関係が破綻している場合にも影響を受けるものではないが,別居ないし破綻について専ら又は主として責任がある配偶者の婚姻費用分担請求は,信義則あるいは権利濫用の見地からして,子の生活費に関わる部分(養育費)に限って認められる」として、有責配偶者からの婚姻費用分担請求につき、子の養育費相当額に限って認めるとしたものがあります。

 この裁判例によれば、別居或いは婚姻関係が破綻している場合であっても婚姻費用分担請求は認められるものの、別居ないし婚姻関係破綻について専ら責任がある配偶者からの婚姻費用分担請求は認められないこととなります。

 なお、学説においては、婚姻関係の破綻の有無や程度によって、生活保持義務の水準ではなく、最低限の生活扶助義務の水準となる場合もあると考える見解もあります。

 

4、婚姻費用の負担期間

 婚姻費用分担義務の始期は、原則として、婚姻費用の請求をした時点からとなります。実務上は、婚姻費用分担請求調停を申し立てた月や、内容証明郵便で請求を行った月からとされています。

 婚姻費用分担義務の終期は、婚姻の終了時点(離婚時点)或いは別居が解消するまで(同一家計となるまで)となります。

 

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