2024/07/26 相続・遺言
【扶養型】寄与分の主張が認められる場合について
本コラムでは、扶養型の寄与が問題となるケースで、寄与分の主張が認められる場合について簡単に説明します。
1、寄与分とは
2、扶養型とは
3、要件
⑴特別な貢献
⑵無償性
⑶継続性
⑷扶養の必要性
⑸財産の維持又は増加との因果関係
4、裏付け資料
5、裁判例
6、おわりに
1、寄与分とは
民法904条の2第1項は「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したもの相続財産とみなし、 第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」としています。
この規定により、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした者がいる場合には、相続財産から当該寄与をした者の寄与分を控除したものを相続財産として算定することになります。また、当該寄与をした者の相続分は、算定された相続分に寄与分を加えた額となります。
上記の条文にいう「特別の寄与」とは、当該身分関係や親族関係において通常期待される程度を超える貢献をいいます。夫婦間での協力扶助義務や、親族間での扶養義務の範囲内の行為は、ここにいう特別の寄与とは認められません。
本コラムでは、「特別の寄与」のうち、扶養型で寄与分の主張が認められる場合について、説明します。
2、扶養型とは
被相続人を扶養し、その結果として被相続人の財産が維持された場合に、特別の寄与が認められる類型です。
3、要件
⑴特別な貢献
被相続人との身分関係(夫婦関係や親族関係)に基づいて通常期待される程度を超える貢献であることが必要となります。
被相続人との身分関係から扶養義務のある者による同居や、一部の家事の分担といった程度では認められません。
少額の金銭を数回給付した程度では、認められることは難しいものとなります。
⑵無償性
無報酬又はこれに近いものであることが求められます。報酬を受領していたとしても、財産管理にかかるコストや通常生ずるであろう介護報酬額等に比して著しく低額であるような場合には、認められることがあります。他方、被相続人の家に無償で居住していたというような場合には、実質的には報酬を得ていたとされる可能性もあります。
⑶継続性
相当期間に及んでいることが求められます。扶養の程度にもよりますが、わずかな期間の扶養では、認められることは難しくなります。
⑷扶養の必要性
前提として、被相続人に扶養の必要があったことが求められます。扶養の必要がないにもかかわらず、面倒を見ていたような場合には、この前提が欠け、寄与分の主張は認められないものと考えられています。
⑸財産の維持又は増加との因果関係
扶養の結果として、被相続人の財産が維持されているという因果関係が必要になります。
4、裏付け資料
被相続人が要扶養状況であったことがわかる資料(預貯金通帳や、非課税証明書等)、扶養に要した費用がわかる資料(相続人の預貯金通帳、被相続人の預貯金通帳等)が挙げられます。
5、裁判例
・大阪家審昭和61年1月30日家月38巻6号28頁
ア 事案の概要
相続人の一人が、結婚後も被相続人と同居し、被相続人が死亡するまで約18年間、被相続人を扶養し,被相続人自身の交際費として毎月多額の小遣いを与え、不動産にかかる火災保険,補修改造,公租公課を全額負担してきたといった事案です。
イ 裁判所の判断
裁判所は、「18年間にわたる金銭的負担は少く見積つても825万円とな」るとした上で、本来他の相続人も能力に応じて負担すべきところを相続人の一人が引き受けたこと、そのために被相続人は自己の財産を消費しないで遺産となったとして、「本来的義務を超えて負担したものとみなされる部分に対応する寄与の効果を認めるのが相当」と判断しました。
具体的な寄与分の額としては、730万円と認めました。
6、おわりに
本コラムでは、被相続人を扶養し、その結果として被相続人の財産が維持された場合に、特別の寄与が認められる場合について説明しました。
寄与分が認められるかについては、個別事情に基づいて判断する必要がありますので、悩まれている方は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。