2024/07/17 離婚・男女問題
宝石は財産分与の対象財産となる?
本コラムでは、宝石類が財産分与の対象財産となるのかについて説明します。
1、財産分与の対象財産
2、一方配偶者の専用品
3、裁判例
4、おわりに
1、財産分与の対象財産
清算的財産分与は、婚姻中に夫婦がその協力によって得た財産を婚姻の解消に当たって清算するものであるため、婚姻中に夫婦が協力して得た財産が清算の対象財産となります。
他方で、夫婦の一方が、第三者から無償で得た財産、具体的には相続や贈与で得た財産については、夫婦の協力で得た財産ではなく、各自の特有財産(夫婦別産制を示す民法762条1項の「特有財産」とは意味が異なります。)となり、清算的財産分与の対象財産とはなりません。
2、一方配偶者の専用品
上記のように、婚姻中に夫婦がその協力によって得た財産であれば、基本的には財産分与の対象財産となります。もっとも、配偶者の一方の専用品(衣類等)については、その配偶者の特有財産として、財産分与の対象財産とならないものと考えられています。
宝石についても一方の配偶者の専用品として、財産分与の対象とならないとする見解や裁判例もありますが、財産分与の対象財産として認めた裁判例も存在します。
以下、裁判例を紹介します。
3、裁判例
⑴財産分与の対象財産とした裁判例
・東京高判平成7年4月27日家月48巻4号24頁
この裁判例で裁判所は、妻が家を出る際に持ち出したダイヤモンドの指輪及びサファイヤの指輪について、合計80万円評価して、夫婦共有財産に当たると判断しています。
(鑑定人の評価によると、ダイヤモンドの指輪については、46万円から138万円、サファイヤの指輪が33万円から99万円とされていました。)
⑵財産分与の対象財産とならないとした裁判例
・名古屋家審平成10年6月26日
この裁判例で裁判所は、ネックレス一点、指輪三点(「購入価額」は、指輪一点が約80万円、他の一点の指輪が30万円、その他は不明)について、妻の専用品と見られるから、特有財産であるとして、財産分与の対象とはならないと判断しています。
4、おわりに
一方配偶者の専用品については、基本的には財産分与の対象財産とならないものと考えらえていますが、上記裁判例のように宝石について対象財産とした裁判例もあります。上記裁判例では、金額が異なるという違い(対象財産と認めたものはその時点での価値が80万円であるのに対し、否定したものは「購入価額」が約110万円となっています。)はあり、このような点から判断が分かれたとも考えられます。
私見ですが、専用品であっても財産分与対象財産全体の価額に比して高額であるような場合や、これを分与対象としないことが夫婦間の公平に反するような場合には、財産分与対象財産と認められることもあるように思います。