2024/07/03 不動産
共有物の変更、管理、保存行為とは?
本コラムでは、共有物の変更、管理、保存行為という行為の分類と、それぞれの行為に必要な共有者の同意について説明します。
目次
1、共有物の処分や管理を巡る問題
2、共有物の変更について
3、共有物の管理について
4、共有物の保存行為について
1、共有物の処分や管理を巡る問題
共有とは、二人以上の者が一つのものの所有権を有している状態をいい、このような状態にあるものを共有物といいます。
共有物を巡っては、当該物件(ここでは不動産を想定します。)の利用方法、具体的には、売却するのか賃貸するのか、その額はいくらにするのかといった点について、共有者間で意見が一致しないことがあります。
また、賃貸や共有者の一人が使用しているような場合には、修繕や改築等、物件の維持に関する事項について、意見が一致しないこともあります。
このような共有者間の意見の不一致が見られる場合に、どのような行為であれば単独でできるのか、他の共有者の同意が必要な場合、過半数で足りるのか全員の同意が必要なのかという点について、民法は、変更、管理、保存行為と分類して定めています。
2、共有物の変更について
民法251条1項は、「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。」と定めており、変更行為には、物理的な形状や性質等の変化を伴うもの(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)が該当します。
その為、このような増改築や土地の用途変更といった行為は変更行為として、共有者全員の同意が必要となります。
なお、共有物の売却や抵当権の設定といった法律的な処分が251条1項の変更行為に含まれるのかという点については、含まれるとする見解と含まれないとする見解に分かれています。
もっとも、含まれるとすれば、変更行為として全員の同意が必要となりますし、仮に含まれないとしても、共有物自体の処分(売却等)については、共有者全員の持分を処分することであり、各持分権者である共有権者全員の同意を当然に要するものであると考えられるため、全員の同意が必要であるという結論に変わりはありません。
なお、共有者の一部が、他の共有者の同意を得ずに、物理的に損傷したり改変したりするといった変更行為を行っている場合、他の共有者は、行為の全部の禁止を求めることだけでなく、特段の事情のある場合を除き、行為により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることもできる(最判平成10年3月24日判時1641号80頁)とされています。
3、共有物の管理について
民法252条1項は、「共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。」としており、共有物の管理に関する事項については、持分価格の過半数の同意が必要であるとされています。
管理行為の例としては、建物の使用貸借契約の解除(最判昭和29年3月12日民集8巻3号696頁)や、土地の貸借契約の解除(最判昭和39年2月25日民集18巻2号329頁)といったものが挙げられます。
賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定については、それぞれ下記の各号に定める期間を超えないものであれば、管理行為として設定することができます(民法252条4項)。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
三 建物の賃借権等 三年
四 動産の賃借権等 六箇月
なお、上記の期間を超える賃貸借契約の締結や、借地借家法の適用がある賃貸借契約の締結については、個別事情にもよりますが、原則として管理行為に含まれず、共有者全員の同意が必要となるものと考えられています。
4、共有物の保存行為について
保存行為については、「各共有者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。」(民法252条5項)と定められており、保存行為については、各共有者が単独で行うことができます。
保存行為とは、共有物の現状を維持するための行為であり、修繕行為のほか、共有不動産の所有者ではないが、登記簿上所有名義人となっている者に対して行う登記抹消請求(最判昭和31年5月10日民集10巻5号10頁)や明渡請求等が挙げられます。